過去作品2

□悲劇への跡取り人生
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 つい先日、取るに足らない小国を圧倒的な戦力を持って、完璧な戦略を駆使し陥れた。圧倒的な戦力に小国の兵は成す術もなく倒され、完璧な戦略に相手は手も出せなかった。
 そんな取るに足らない小国のお姫様を前に、吉継はふわふわと空中に舞いながらお姫様に目を向けた。澄んだ瞳に美しい黒髪、そして瞳と同様に肌も白くきめ細かかった。

「なに、そのように睨むでない」

 吉継は自分の大将を思い出すような形相に、苦笑を浮かべた。そしてなんとも言えない凛とした表情に、吉継はその言葉以外なにも浮かばなかった。
 次に浮かんだ言葉は、目の前のお姫様が少し泣きそうな表情になったら話しかけよう、そう心のなかで気付かれぬよう決意した。最も、優しい言葉などかけてやるつもりなど元も子もないが。
 そんな吉継の決意を破壊するように、気高いお姫様はその艶やかな唇を上下に開いた。

「このようなやり方で国を落としてきたのですか」

「…ああ」

「国は折れたとしても、自由を奪ったとしても、誰もあなた方のやり方に首を頷くような方はおりませんでしょうに」

「何が言いたいのか、ちっとも分からんな」

「いえ」
 
 お姫様はそう言って少し俯いた。その表情には悔しさなどはなく、どこか同情するような表情であった。何を勘違いしている、吉継は胸の内が微かに揺れ動き、くるりとお姫様から背を向けふわふわと規則的に動き始めた。

「ただ、駄々をこねる子供のようで、なにかにすがり付いていないと壊れてしまいそうな、そんなあなた方に同情したまでです」

―そのような同情心を抱くなど愚かしい女子よの

 吉継は自分たちを落とした張本人である者達に同情する世間知らずの少女に、自分もまた同情の念を浮かべていた事に気付かぬように、襖をばたんと大きな音をたてて閉めた。


悲劇への跡取り人



 

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