過去作品2
□キャンディが無くなるまでは
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「キャンディーはいかが?」
「…………はい?」
しまった、ふぬけた声が出てしまった。口元に手を宛てがい、レムレス相手に構えていた手を、素早く後ろに隠した。てっきりぷよぷよ勝負をするかと思ったため、レムレスと出くわした瞬間に身構えたのであった。
レムレスはキャンディーをいくつも乗せた手の平を差し出しながら、にこにこと相変わらず表情の読めない笑顔を浮かべていた。
「……」
「勝負しないよ。君に食べて貰いたいんだ」
「…た、食べる…」
レムレスの手から、一番大きくてピンクの包みに包まれたキャンディーを取った。キャンディーの両端に力を軽く入れ、包まれていたキャンディーを取り出した。これもまた綺麗なピンク。
口に放り込めば、口いっぱいに広がるストロベリーの香りに、思わず笑顔になってしまった。
「おいしいでしょ」
君の笑顔、癒されるな。レムレスがそう言うと顔に熱が一気に集まり、どの色の飴よりも、綺麗な赤色になった。レムレスは相変わらず、表情が読めない笑顔を浮かべていた。
「次はぷよぷよ勝負する?」
ふとレムレスが何を思ったのか、箒から飛び降りて、尋ねた。レムレスがそう尋ねて来たのに対し、口の中でコロコロ転がる飴玉を片方のほっぺに移動させた。そして深呼吸をして、レムレスの目をしっかりと見つめた。
「当たり前でしょ。私、強くなりたいもの」
「じゃあ、僕も手伝っていいかな」
「物好きだと思われるよ?」
「物好きだから、僕は僕でいられるんだよ」
自慢するように、威張るように胸を張りながら、答えると、自らの手の平に置いていたキャンディーを掴み、口の中に放り込むと、再びキャンディーを差し出してきた。
「キャンディーはいかが?まだまだいっぱいあるよ」
キャンディーが無くなるまで
(ぷよぷよ勝負はお預けにしよう)