過去作品2
□泡光
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孤独に後悔はしちゃいけないよ。
それが、くるみの口癖だった。意味が分からず、俺はいつも「へぇ」と、あまり感情も込めず相槌をする。
孤独に生きるからこそ、誰にも見つける事のできない力が、誰にも手に入らない力が、俺に手に入ると思ってた。
そうくるみに話すと、くるみは苦笑いしながら困ったように笑って、俺の目の前にやってくる。
「それは孤独じゃなくて、雲みたいじゃないの」
「雲・・・・?」
「うん。ふわふわしてて、誰にも掴めなくて、いつも空に浮いていて、手が届きそうで届かない。届いても、きっとすり抜ける。それが雲よ。」
「・・・くるみは俺を馬鹿にしてんの」
ムスッ、と不機嫌そうに「それぐらい知ってる」と言えば、くるみは「ゴメンね?」と、申し訳なさそうに笑った。
「でもそうじゃない」
「・・・・・?」
「本当は、」
くるみの声が、風が吹くと同時に、凄く大きな声で聞こえた。
俺は珍しく、口許を緩ました。
「・・・・それ、絶対違うね」
「そう?」
「うん」
―――ほたるが淋しがり屋な所とか、本当は高いところに居たくくないのに居たがるところとかね。
泡光