1日1ハロウィン!

□リンネ
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「ネ、ネ、るう子、るう子」


くいくいと何度も腕を引っ張ってくるリンネくん。ねえ、あたし年上なんだけどと呟くがリンネくんの耳元にはうんともすんとも届いていない。それどころか、更に腕を引っ張ってくる。


「……はあ、なに」


三年生は忙しいんだよと言うとリンネくんはにへーと笑い、手を差し出してきた。


「Trick or treat!」

「…………」


英語は専門外なんだ。そう告げるとリンネくんは「逃げないデヨ」と腕を力強く掴んできた。いや、本当流暢すぎて分からないんですよねこれが。三年Fクラスなめんなよ。とりあえず、聞き取れたのは「or」だけなんだが、うむ、リンネくんが期待しそうなこと……。
考え、ぽふんと手を合わせた。あれしかない。


「死体は明久で妥協してくれるかな」

「エ!?何の話!?」

「え、だって、dead or aliveって」

「orしか合っテないヨ!」


一体なんだっていうんだ。ちらりと腕時計を見ると授業開始数秒前。あれ、次の時間遅刻するかも?あたしはリンネくんに「ごめん、また」と言い残し走って教室に帰る。あ、とリンネくんの声が聞こえた。


「るう子!Trick or treatだかラね!」


教室に駆け込み、セーフと自分の席に座る。ふとハロウィン限定のポッキーの袋が目に入り、あたしは「あ」と先生の号令とともに声を漏らした。


(今日、ハロウィンだ)


忘れてたというか、リンネくんが聞いてくることを視野に入れてなかった。しかたない。後でポッキーあげとこうか。


 

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