1日1ハロウィン!
□凛
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るう太へのハロウィンクッキーを作っていたはずなのに、完成品を見てみれば出来たのは木の燃え滓。――なんでこうなるの、私はたまらずため息を漏らした。
そもそもるう太みたいな熱血愚直鈍感馬鹿のことなど気にかける必要もないのだが、身体が勝手に動いていた。ああ、アーチャーに聞けばよかったかしら。後悔先に立たずとはまさにこのことだ。
「不味い、わよね……」
「ええ?普通だよな?」
「普通じゃないから困って、るの…よ……?」
アーチャーにしては僅かに高い声が応える。いや、誰よ。私は黒こげのクッキーだったものを手に持ったまま振り返った。
るう太がへえとクッキーを見ながら呟いている。
「遠坂、クッキー作ってんのか」
「あ、ああああんたには関係ないわよ!」
たまらずそう叫べば、ああやっぱり?、とのんきな声が聞こえる。ああもう私の馬鹿。こいつのために作ったってのに……!
「……」
身体の前で腕をクロスさせ小さくなっていると、ざくっと謎の音が聞こえた。恐る恐ると振り返ると、るう太が口いっぱいに消し炭クッキーを食べていた。って!
「ななな、何食べて、!」
「美味しいよ、遠坂」
にかりとるう太が笑う。ザクザクとクッキーにあるまじき音を立てながら食べている。
「でも、俺クッキーにクリーム欲しいな」
「……は?」
「次、ハロウィンクッキー作るときはクリーム乗せてまた俺に頂戴」
何個か手のひらに乗せ、るう太は調理場を出て行く。え?、と呟かずにいられなかった。また、とは私が渡すことを知っていたのか。そう思うと、顔中に熱が集まってくるのが分かった。
次は、そうだ。ちゃんとアーチャーに聞こう。クリームも。