1日1ハロウィン!
□しえみ
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「ほぁああ…!」
しえみが羨望の眼差しを向けたまま、感嘆の声を漏らす。多分、俺の手にあるものが珍しいんだろ、箱入り娘(ん?違うか?)だったみたいだし、仕様がないか。
「あ、あのるう太くん、なんでカボチャの飴食べてるの…!」
「ん?今日がハロウィンだからだ」
ハロウィンにカボチャ味の棒キャンディ(ちなみに形もカボチャ型)を食べるなんてそのまんますぎるか。俺は頭をがりがりと掻き、しえみを横目で見る。……ガン見だよガン見。
「…………………………いる?」
甘いし、しえみにも良い体験になるだろ。鞄から同じ飴を取り出し、あたふたと慌てるしえみに渡す。
「そっ、そんな、勿体ないよ」
「いいから食え」
「でも…、」
なかなか受け取らないしえみの右手首をやんわり(自分的には優しく)掴み、ハロウィンキャンディを渡す。でも、でもと好奇心と罪悪感で揺れるしえみに、俺は口にある飴を取り出し、唇に付けた。
「俺にはこれがあるからいいんだ」
だからさっさと食え。
バァッと明るい顔になったしえみを見ながらハロウィンキャンディを食べてごらんと促す。袋から丁寧に出し、名残惜しげに口に含む。
「うっ、わぁあ……!美味しい…!」
「だろ?」
遠くで志摩や勝呂が「ありえへん…ありえへん…」と呪文のように繰り返しているが、素知らぬふりをする。
「るう太に貰えて嬉しかったなぁ」
……素知らぬふりをかましていた顔がひくりと動く。まじか、ゲテモノハロウィンキャンディも捨てたもんじゃないな、と味音痴の舌で舌鼓を打った。