1日1ハロウィン!
□ホズル
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「ほお、これは珍しい」
ひょいとホズルさんがカボチャのランタンランプを持ち上げる。そんなに珍しいだろうか。いや、個人的には見慣れたものだが、未来、いや現在ではありえない代物なのだろう。
「るう子は本当に器用だな。ライガットのところにいるのが勿体無いくらいだ」
「はは、お世辞どうもです。ホズルさんもやってみますか?」
そうだな、やってみようか。僅かに笑んでホズルさんは小さなカボチャと果物ナイフを受け取ってくれた。ホズルさんは正直言って、大きい。私の手に少し大きいカボチャですら、ホズルさんの手の内ではとても小さく見える。
これをこうか。ホズルさんがカボチャを掘り出す。中身をくり抜いて、形を整える。簡単なのだがこれが難しい。
「……」
ホズルさんは一心にカボチャを彫る。
一国の王様に見えない。カボチャを彫る姿は父親のようで、つい、頭を撫でてほしいなあ、なんて呟きそうになる。
「……るう子、こんなできか?」
「わっ、ホズルさん。とっても上手いです!」
器用に掘られたカボチャのランタン。私の方がうんと長く彫ってるはずなのに、ホズルさんが上手いって悲しすぎる。私は受け取ったカボチャのランタンに発光石英を放り込み、ホズルさんに手渡した。
「はい、ホズルさん。これで楽しい夜が過ごせますよ!」
「はは、そうか」
よし、と腰を上げホズルさんはこちらを向く。
「良い息抜きになった。ありがとうな、るう子」
ふわりとホズルさんの温かい手が私の頭を撫でる。目を見開いていると、ホズルさんはランタン片手に執務室へと軽い足取りで帰って行った。
実はエスパーだったり。ありもしないことを考えながら、ホズルさんの撫でてくれた髪を触った。