1日1ハロウィン!
□アラジン
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「るう子おねえさん!」
「やっ、アラジン」
ジャーファルさんからの(地獄からの)逃亡を果たした私の目の前に、両頬をぷっくり膨らませたアラジンが現れた。
いやなんだ、これでも彼(か)の伝説のマギだと言うんだから、びっくりだよ。
「アラジン、その両頬には一体何が入ってるのかな?」
「夢と希望さ!」
聞いた私が馬鹿だったのか。
思わず硬直していると、アラジンは嘘だよと小さく笑ってきた。そして、べっ、と舌を出し、青色の飴玉を見せてきた。
「飴玉?」
「そう!今日はハロウィンっていう素敵な日みたいだね!るう子おねえさんと会う前に、シンドバッドおじさんに聞いたんだ」
「へえ、ハロウィンねぇ」
無縁だった訳ではないが、どうもぴんと来ない。
はて、だから宴の準備にみな忙しなく動いて、可愛らしく仮装しているのか。
「るう子おねえさんは知らなかったのかい?」
「いや、あんまり興味がなかったに近いかな」
「えー」
こんなに楽しいお祭りなのに?とアラジンが小さく不服を立ててくる。可愛い……。たまらず頭を撫でると、むーっと更に不服そうに顔を歪ます。
「るう子おねえさん、ひどいや」
「うーん。とは言ってもね……」
「あ、そういえば」
何かを思い出したようにアラジンは私を見てきた。そして笑った。
「トリックオアトリート!お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうよ!」
「持ってない」
「早いよッ!」
間髪入れずに返事をしたというのに、アラジンはさめざめと泣いている。持ってないものは仕方ないじゃないか。
するとアラジンは仕方ないなあ、と言って私に顔を近づけ、口付けしてきた。
「はい、るう子おねえさん」
「っえあ?」
甘い香り。……飴玉だ。
アラジンはくすくす笑いながら私に手を振り立ち去る。ちくしょう、伝説のマギとはいえ一枚も二枚も上手なんて笑えるじゃないか。……ときめいたなんて絶対言ってやらない!
飴玉をころころ転がしながら、お祭りでどたどた忙しなく動き回る使用人を見ながら、少なからぬため息を吐いた。