過去作品
□「強くならないで」
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ナタクはツンデレだ。文句のつけどころのないツンデレとは、まさしくこの事だろうね。
ナタクはカッコイイ。そりゃあ、どんなに悪いことしても怒られなさそう。
ナタクは…ナタクは…強い。
何回も言うけど、強い。最強を求めているみたい。
「俺は、強くなる」
何回も、何回も、私の目を見てはっきり言った。だから私はいつも、「強くなってね」とか、「ナタクならなれるよ」とか、心にも思わないことを言ってしまう。
ナタクに強くならないでほしくない。確かに好きな人は強い人が良い。でもナタクは十分強い。
私は、いつもそのことばかり頭に巡らしていた。
親友の天化に相談すれば、
「どうしてさ?」
と、訳の分からないように聞き返す。
変だよね、と私がそう言えば、天化は「矛盾してるさ」と言い、目の前にあったお茶を口に運んだ。
「そうね、」
確かに、矛盾しているね。
でも、きっと矛盾してないのよ、天化。
私は怖いのよ。ナタクが強さだけを求めるあまり、命すら投げ出して、この世から消えてしまう、って想像したら強くなってほしくなくて…。でもきっと、私は一緒見守っているだけで、きっと、きっと、きっと、泣いて後悔するかもね。
「おい、」
「あ、ナタク」
「ナタク…?」
「さっきから呼んでいるのに気づかないなんて、悩み事でもあったのか?」
「あーた、以上に優しいさ」
「うるさい」
この優しさが、永遠にあり続けることが、私の唯一の願い。
「強くならないで」
(言えない言葉が、)
(心に突き刺さる)