過去作品

□書きかけの日記
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―――…ポツン、ポツンッ


 雨が物音一つすらしない静寂な部屋で、物悲しそうに音楽を奏でながら窓に当たってきている。

 僕はどうしてこの部屋にいるのかな。ちょっと前に誰か来なかっただろうか。読み掛けの本はどこに置いたかな。僕はなにをしているのかな。あれ、


「………なんで僕は」


 泣いているのかな。
 ぽろぽろぽろ、と規則正しくこぼれ落ちる涙を、僕はただア然としながら手で押さえ込んだ。けど少しずつ、指と指の隙間からぽろぽろと再び流れ出た。

 ちょっと、泣くなんてカッコ悪いかな。ふと僕は何かを思い出した。
 記憶の隅で、棘に刺さって動けない大事なこと。僕が泣いている理由だよ。


 僕はどうしてこの部屋にいるのかな。
大切な人の部屋なんだ。この世が終わっても愛しい人の。

 ちょっと前に誰か来なかっただろうか。
ロイとアイク、リンクやゼルダにピーチ。泣きながら僕に告げに来たね。

 読み掛けの本はどこに置いたかな。
みんなが来た時に、床に落としたんだ。確かベッドの下。

 僕はなにをしているのかな。
見ればわかるだろ?泣いているじゃないか。


「……くるみが死んだんだ。」


 人として、寿命が来て、ボロボロになって、誤って階段から転落して、血が止まらなくて、冷たくなって、人の声すら聞こえなくて、大好きで大好きで大好きで大好きで、いつまでも愛しくて……

 僕は少量ずつ流れていた涙が、いきなり外の雨のようにボロボロと流れてきて、すすり声を上げながら、くるみの大切にしていた日記を、力強く抱きしめた。

 この日記は、未来永劫、くるみの生きた証として、僕はずっと持ち続けると誓った。










○月 △日 快晴


マルス、ずっと大好きだよ








書きかけの日記
僕も伝えたかった。
好きだよって、
ずっと守る、って……!!!





 

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