過去作品
□神様の嘘つき
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「馬鹿な伏羲、」
「誰が馬鹿だ、くるみ」
伏羲しかいないじゃんか。唇を尖らしながら意地悪そうな笑顔で、くるみは自分と並列に歩く伏羲に目もやらず言った。それは伏羲も全く同じ行動をし、くるみに目もくれてやらず言葉を返した。
「伏羲は本当に馬鹿だよ」
「…お主もわしに劣らぬ馬鹿であるわ」
さすがに何度も何度もくるみに馬鹿馬鹿連呼され、伏羲は自らが馬鹿であることを認めた上で、くるみの頭を後ろから押すように掌を乗せ、髪の毛をくしゃっと撫でた。突然のことに、くるみは小さく悲鳴混じりに言葉を吐き出した。
「わっ、」
「やはり色気のない声だのう」
うるさい。
端から見れば兄妹にも見えなくはない二人は、頭を後ろから撫でている伏羲に、その手に両手を添えながらくすぐったそうに目を細めるくるみ、しかし、どこか二人には越えることができない壁のようなものがあるように見えた。
くるみのみ、伏羲を疎外しているそんな気もした。しかし、真意は表情から読みとれれる訳もなく、くるみは伏羲に向け笑顔を向けた。どこか泣き出しそうな、そんなことを印象付けた。