過去作品

□口パクの告白
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 姫発が何を思ったのか、真面目に仕事場の席に座って、ペンを動かしていた。
 鼻歌を歌っているわけでもなく、部屋には静寂、というより姫発が動かすペンの紙の上を通る音のみ聞こえていた。太公望や弟である雷震子もフリーズしたり、あまりのことに感動の涙を零した者もいた。

 もちろん、くるみも例外ではなかった。姫発が真面目に頑張ってる姿を見て、最初は風邪を引いたのではないか、と心配したくらいだった。

「別に、風邪なんて引いてねーよ」

 くるみにかけた言葉は、ただそれだけだった。真面目に仕事をする姫発、異様な光景に、いつも真面目に仕事をするくるみは、何回も姫発を横目に見た。しかし、姫発は何も気にしなかった。

 くるみは、心配になり声を再びかけた。
 
「姫発、」

「なんだよ、くるみ」

「あの…お茶いる?」

 あー、いる。いざ声をかけてみたものの、何を言えばいいのか、くるみには思い付かなかった。
 何か企んでいるのか?そう思うと鼻歌を歌わない意味が分からない。でも、とくるみはお茶をつぎながら思考錯誤した。しかし、何一つ思い付かなかった。

「(ま、姫発が頑張ってる事で良し、とするかな。)」

 自己解釈をしたくるみは、お茶を姫発の前に静かに差し出した。

 よく見れば、綺麗な手をしているな…、とくるみは じっ、と姫発の手を見ていた。姫発もさすがに気になったのか、ペンの動きを止めた。



 
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