過去おまけ掲載文
□おまけ
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無印終了後の話。本編設定。博士とは恋人同士です。※無印ネタバレあり。
◇◆◇◆◇◆
資料に目を通し終わり、サカキが就寝の準備をしていると、訪問者を知らせるチャイムが鳴った。
こんな夜更けに訪れる人間とは…
…ツバキ君か?
急用だろうか。
ノヴァの脅威が去ったとはいえ、未だ極東は不安定な情勢だ。
不詳の事態が起きたとも考えられる。
浴衣に羽織を引っ掛けると、部屋の入り口に足を向ける。扉を開けると、意外な人物がそこにいた。
「…ユウ?」
寝巻き姿の彼女が、顔を僅かに俯かせて立っていた。
「どうしたんだい?こんな時間に?」
しかも寝巻き姿で。こういった無防備な姿は、あまり晒して欲しくないのだが。
自分がそう聞くと、ユウはもじもじと手を擦り合わせ、『あの…その…』と何だか言いづらそうにしている。
「取り敢えず中に入りなさい。」
こんな姿で立ち話と言うのも、あまりぞっとしない。話すのを躊躇している彼女を、部屋に入るよう促した。
ソファーに彼女を座らせて、ココアを作り差し出した。
『ありがとうございます』と、ユウはそれを受け取り口にする。
差し出した時、触れた指先が冷たかった。
まったく…馬鹿な子だ…
あのうすら寒い廊下で、かなりの時間立っていたのだろう。躊躇わないで、直ぐに部屋を訪ねればいいだろうに。
「それで…急にどうしたんだい?こんな遅い時間に、僕のところに来るなんて。」
誘いに来た…何てことは初心なこの子の場合はないだろう。
第一、彼女の様子を見れば、そんな状態ではないことは一目で分かる。
「…笑いません?」
「誓って。」
上目遣いでそう言う彼女に、微笑みながらそう返した。
それを聞いて安心したのか、ユウはおずおずと語り始める。
「夢を見たんです…すごく‥怖い夢を…」
「…夢?」
不安げな眼差しでこちらを見つめると、ユウはコクリと一つ頷いた。
「あの時、アーク計画を阻止する為にエイジスに乗り込んだ時の夢…なんですけど…
ノヴァの終末捕食を止められなくて…皆ノヴァに食べられちゃうんです。
けど…私だけどうしてか生きていて、誰もいない、何もない世界で一人ぼっちで…」
ユウの声は震えていた。余程、怖かったのだろう。
「いくら呼んでも誰も応えてくれなくて…怖くて…
目が覚めても不安で、博士が…ちゃんとここにいるのか確かめたかったんです…」