過去おまけ掲載文
□おまけ
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博士、支部長の若き日のお話です。激捏造話。
年齢設定としては、三十路手前ぐらい。ソーマが生まれる一、二年前ぐらいで。甘要素なし。
◇◆◇◆◇◆
「ペイラー。」
起き抜けで、気怠い身体を引き摺りながら、研究所の廊下をサカキが歩いていると、後ろから友人に声を掛けられた。
非難の色を乗せたその声に、ああ、また何時ものお小言かと、
若干、寝癖のついた頭をポリポリと掻きながら、後ろを振り向く。
「…おはよう、ヨハン。」
「…もう、昼をとっくに過ぎている時間だが?」
呆れ気味にそう言うと、はぁと、彼は深いため息を吐いた。
「朝帰りも、これで四日連続だ。君の女性関係を、とやかく言うつもりはなかったんだが…さすがにこれでは困る。」
眉間にシワを寄せ、こちらを見据えるその顔には、お馴染みの渋い表情。
言うつもりがなかったのなら、そのまま黙って見過ごしてくれればいいものを。
ヨハンとは長い付き合いだが、お節介が過ぎるその母親のような性格だけは、
いつまでたっても馴染めない。
「別に構わないだろう?
僕は君と違って独り身だし、どんな女性と床を共にしようと、非難される謂れはないと思うけど?」
「君が普通の人間なら、私も何も言わないさ。
だがね、ペイラー…君はアラガミ総合研究所《ここ》の重役だということを、忘れていないか?
上に立つ人間が、そんな乱れた生活をしているようでは、下の者に示しがつかないんだよ。」
実に耳に痛い正論を、ヨハンは突きつけてくる。
はっきり言うと、自分はその重々しく大仰な肩書きが、嫌で仕方なかった。
大体、自分はアラガミの研究が出来る環境が整っているからという理由だけで、ここに居座っているのに過ぎないのだ。
別に、誰も偉くしてくれとは言ってない。
「僕から誘ったことは、一度もないんだけどねぇ…
向こうからどうしてもと、言い寄って来るから、仕方なく相手してただけなんだけど。」
やれ天才やら、将来有望な研究者やら…
自分の周りには、他人が勝手につけた肩書きに、
砂糖に群がる蟻のように寄ってくるあざとい女ばかりで、ろくな奴がいない。
まあ、それを承知で、欲の捌け口に利用している自分も、ろくなものではないが…
「そういう問題じゃないだろう!
誰彼構わず相手していることが、不味いと言ってるんだ!!」