過去おまけ掲載文
□おまけ
1ページ/1ページ
『深酒』後のリンドウさんとのifの話です。
◇◆◇◆◇◆
「…よっ‥と。」
リンドウは、酔いつぶれ眠る少女を静かにベッドに下ろす。
「…たくっ、無茶ばかりしやがる…」
ベッドの端に腰掛け、眠る少女の額に掛かる髪を、優しく撫で付けながら彼はそう呟いた。
子供扱いしたのは、あの男から少しでも早くこいつを引き離す為だ。
だがそれがまさか、こいつにあんな馬鹿な行動を取らせる結果になるとは思ってもみなかった。
「……んっ…」
髪に触れる手がくすぐったかったのか、自分から逃げるように少女は身体を捩らせる。
お前は知っているだろうか?
俺がどんなに、お前を愛しく思っているのかを。
始めはただの可愛い新人。
けれど、共に過ごすうちに、その真っ直ぐな心根に、男相手でも物怖じしない胆力に、自分に向けられる無邪気な笑顔に。
……惹かれていった。
お前は気が付いているだろうか?
俺がどんなに、お前のことが好きなのかを。
「…幸せそうな面して、眠りやがって…」
人の気も知らず、眠りこける少女の鼻を、リンドウはむんずと摘まんだ。
ふがっと、苦しそうな声を一瞬上げたが、それで少女が起きることはなく、彼女は静かな寝息をたてて眠っている。
「…はあ、あんま無防備にしてっと、襲っちまうぞ…」
そう言うと、リンドウは身を乗り出し、彼女の唇に自分の唇を軽く押し当てた。
このぐらいの、役得があってもいいだろう。
今の状況は、据え膳食わぬは…というやつだ。
こんな状況で、この程度で我慢している自分は、大したものだと感心する。
「お前が好きだよ。」
「…私もです。」
独り言を突然返され、リンドウはギョッと驚いた顔をして腰を引く。
「‥おまっ!起きて…」
『はい』と、彼女は頬を赤らめリンドウに答える。
「…私も、あなたのことがずっと好きでした。」
そう華のような笑みを返され、彼はぐっと言葉を呑む。
「あの…もう一度…好きって言ってくれませんか?」
「…っ!」
リンドウは、はにかむ少女を掻き抱き、彼女に深く口付けた。
言葉の代わりに、その行為こそが、自分の気持ちなのだというように。
深く、長く、彼女に口付けをした。