黎明の夢 外伝

□誰が為に鐘は鳴る 後編
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前後に分断されたヴァジュラテイル。このまま、距離離し、維持したまま優位に戦闘を持ち込まなければ。

だが、当然ながら奴らも大人しく神機の錆になってくれる訳もなく、後方にて伏していたヴァジュラテイルが体勢を立て直し、奇襲を掛けたこちらへと襲い掛かかろうとする兆しが見てとれた。

その様を目にし、カレルは小さく舌打ちを打つ。

「フェデリコ!後方のヴァジュラテイルの足止めを計れ!!シュン!前方に接近するテイルに打ちに出るぞ!」

そう指示を出せば、二人は了解と気持ちよく応えを返した。
その不可思議さに、知らず口許が緩む。

享楽的な戦闘を好むが故に自己を顧みないジーナ。
己の実力を過信する為に協調性を欠くシュン。
そして、戦果を求めるあまり、幾度も引き際を見謝ってきた自分…

以前の自分達ならば、個人プレーに宗旨して連携など取るに及ばないと、好き勝手、自分勝手に戦っていたことだろう。

それがどうだ。
こうして、各々の役割を務め、拙くともチームプレーを行えるほどには、自分達は共闘出来るようにはなっている。

これもあのお人好しの中尉殿の"悪影響"の所為かも知れないと、カレルは嬉しそうに微かに微笑んだ。

敵との間合いが詰まる。
互いの攻撃の手が届く距離まで詰めると、シュンはその手の抜き身の刃を振り抜いた。
対するヴァジュラテイルも、軍配を掲げるように己の巨大な尾を高く振り上げ、刺持つその尾を横薙ぎにする。

搗ち合う白刃と星球は、宙に数多の火花を舞い散らした。

「うおおおぉおおおお―――っ!!」

鍔迫り合う互いの刃。
が、押し勝ったのはシュンの方であった。

刃に食い込む尾を弾き返せけば、体勢を崩したアラガミは前のめりになり、その身体は隙だらけになる。

「カレルっ!!」

シュンは背後に控える自分を一瞥すると、追撃を成せと目で促した。

「了解だ!」

ヴァジュラテイルの側面へと回り込み、がら空きになった脇腹へと銃弾を撃ち込もうと、カレルは神機の引き金を引いた。
が――、

「――なっ!?」

トリガーを何度引いても銃口が火を吹くことはなく、カチカチと空しい音だけが響いている。

「…クソッたれ!!こんな時にジャムりやがった!!」

カレルは苛立たしげに神機の銃身を拳で殴り付ける。

作動不良。

1000回に一回は起こり得るその事象にこのタイミングで起こされるとは、なんと間が悪いことなのか。
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