黎明の夢 外伝
□誰が為に鐘は鳴る 後編
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ここぞという時に貧乏クジを引く、幸運値の低い己がつくづく恨めしい。
焦るこちらを見透かすアラガミは、この好機を逃さぬべく立ち尽くす自分に向かいアギトを大きく開いた。
「…ちぃっ!!」
追撃を諦め、カレルが緊急回避の為の体勢を取るや、後方から銃撃がヴァジュラテイルの頭部を撃ち抜く。ジーナの牽制射撃。続き、シュンの斬撃がテイルの下肢を捉えた。
ザシュッ!!と、腱を削ぎ落とされたヴァジュラテイルは、膝を折り平伏するようにその身体を大地に伏す。
「カレル!退け!!後は俺達が引き受けるっ!」
下がれと命じる相棒は、無防備な自分に敵を近付けないよう刀を振り乱し、アラガミの前に立ちはだかった。
…クソッ!俺がお荷物だと!
冗談じゃない。何も出来ずに、ただ後ろで馬鹿みたいに戦況を眺めているだけなど、自分のプライドが許さない!
喩え、銃は使えなくとも、アラガミの素材より造られた神機の銃身ならば、鈍器の代わりにぐらいはなる筈だ。
そう思い立ち、一歩、前へと足を踏み出したところ、後ろから肩をきつく掴まれ、カレルはその場に押し留められた。
「…死に行くつもり?」
「ジーナ!?離せよ!」
「下がりなさい、カレル。いまの貴方が前に出ても、射線上の遮蔽物でしかないわ。味方の弾で死にたくはないでしょ?」
邪魔だと、そう冷たく突き放したジーナは自分と入れ代わるようにして、シュンとフェデリコの支援に回る。
「…クソッたれ…お預けかよ…」
未だ、起動する様子のないポンコツをカレルは口惜しそうに握り締めながら、戦う仲間達の姿を手持ち無沙汰で眺めるのだった。
雑魚に等しい標的であったこともあり、メンバーを一人欠いた状態でも任務は滞りなく遂行された。
その事実が尚腹立たしい。
「へへっ、残念だったな、カレルぅ?今回ので累計討伐数は俺がお前の抜いたんじゃね?」
などと、ニヤつくシュンは自慢気に胸を張っている。
「ばぁーか、まだ俺の方が二体多い。それにだ、最後のヴァジュラテイル、止め刺したのは新型だろうが。ありゃノーカンだ」
「なっ!?そりゃないだろ!アイツをファンブルに持ち込んだの、俺じゃんか!」
「は、敵機は撃墜しなきゃ意味ないぜ?なあ、新入り?」
仕留めた本人に話を振れば、振られた新入りはこんな風にとばっちりが来るとは思っていなかったようで、ギョッとした面持ちでこちらを見遣った。
フェデリコはやや青い顔をして、ふるふると顔の前で手を振ると、シュンに不可抗力だと必死に訴える。
だが、手柄を横取りされたデコッパチにはその真摯な態度は通ぜず、酷く口惜しそうに後輩の顔を睨み付けていた。