黎明の夢 外伝
□bad drunk!
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アクアビットも十分強い酒でしょうが…
とは思うもトラブル回避の為、言葉にすることは控えさせてもらった。
呆れたようにリンドウは、手にしたビールを口につける。
40度など、ビールの度数からすれば十倍の強さ、十二分にキツイ酒だ。
それを、然も水でも飲んでいるように言われてしまえば、こちらも返す言葉を失ってしまう。
「ん…確か、お前がボトルキープしてあるバカルディ(75.5度)があった筈だが?それもないのか?」
そう問われて、リンドウはギョッとした。
弟がキープしてある酒までアンタは把握してるんですかいっ!と、思わずつこっこみそうになった右腕を理性で止める。
「…何時の話をしてるんですか…あのラムはとっくに飲みきってますよ…」
そうか…とツバキは至極残念そうな面持ちで、三杯目となるアクアビットをグラスに注いだ。
この調子ではぐらかしていけば、なんとか凌げるか?
横目で姉の様子を窺いつつそんなことを思えば、リンドウの視界の端に賓客以外の見慣れぬ人影の姿が入った。
搬入用の台車を大儀そうに押し進める配達員風の若い男。
食堂の仕入れの品を納品に来たのだろうか、青年は伝票を片手にホールをうろうろしている。
「あのー…すみませんお届け物です。こちらにアリサ・イリーニチナ・アミエーラ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、はい、私です」
アリサは返事を返すと、配達員の青年の許へと歩み寄る。
運び込まれた荷物は、どうやらこの少女宛の物であるようだが、しかし…
…中身は何だ?
台車の上には大仰な木箱が数個、整然と並べられている。
個人宛の荷物であるなら、自室へと送られる筈であるし、また個人の荷物にしてはその量も多い。
あー…なんか、すっげー嫌な予感がする…
配達員は荷物をアリサに差し渡すと、会釈をしてカフェテリアを去っていった。
「何が届いたの、アリサ?」
少女の隣で料理を振り分けていたサクヤが、その大荷物に目を向けながら怪訝そうにそう聞いた。
彼女はサクヤの問い掛けに、はみかみながら応える。
「ふふ、私からの細やかなお祝いの品です。ロシア支部にいた頃、お世話になった先生に頼んで送ってもらったんですよ?」
そう言って、アリサは木箱の蓋を徐に開けた。
そこには――、
「うげっ!?」
中身を目にしたリンドウは思わず呻き声を上げる。