黎明の夢 外伝
□もう一度、ここから始めよう
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ゆっくりとユウが目を開けば、そこは帰りたいとずっと願っていた場所だった。
ベッドサイドのナイトテーブルの位置も、室内を仄かに照らす間接照明の色も…何もかも…変わっていなくて、彼との関係も変わっていないのではないのかと、錯覚しそうになる。
けれど、この部屋には恋慕うあの人の姿は何処にもない。
…探さなきゃ。
探して、会って、ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃいけない…
今まで彼を傷付けていたことを、彼に謝らなきゃいけない!
ユウはベッドから身を起こそうとするも、身体は鉛のように重たくて、上手く動くことが出来ない。
床に足を付けベッドヘッドを掴んで支えにし、なんとか立ち上がると、ユウは部屋のドアへと覚束ない足取りでゆっくりと歩き出そうとする。
一歩ずつ。少しずつ。
少女はやり直す為の歩みを踏み出した。
「…くっ…はっ…」
ぐらりと、何度も倒れそうになるのを必死に堪え、漸く辿り着いた扉へとユウは腕を伸ばし、指先がそれに触れる。
その刹那、
「え!?あっ!!」
伸ばした腕の先が、急に開け放たれて無くなり、支えをなくした身体は前へと倒れていった。
「危ないっ!?」
そう誰かに叫ばれて、前のめりに倒れ掛けた身体を受け止められた。
……あ…
広い胸に身を預ければ、鼻をつく懐かしい優しい匂いに目頭が熱くなる。
見上げれば、そこにはやっぱり逢いたかった彼がいて、心配そうな面持ちで自分を見下ろしていた。
「…かせ…はかせ…」
「まったく…何をやってるんだ、君は…そんな身体で何処に行くつもりだったんだい…いや、詮索は後だな…よっ!!」
博士はひょいと自分の身体を抱き上げると、ベッドへ再び戻そうとする。
「は、博士!わ、わたし、私…博士、ごめ…ひゃあっ!?」
言葉を紡ぐ途中、聞く気もないのか、彼は話を遮るようにベッドの上に身体を降ろした。
スプリングに身体が二、三度跳ねて舌を噛みそうになる。
「話は後で聞くから…今はゆっくり休みなさい」
そう言うと、博士は寝かし付けるように毛布を自分の身体に掛けようとした。
でも、今、彼に話したい。ユウは博士の手を掴み、身を起こすと泣きそうな顔で彼に詰め寄った。
「後でじゃダメなの!!」
「…リンドウ君のことが心配かい?彼なら無事だよ。君より先に目を覚ましたし、今、ラボで精密検査を受けてるところだ」