黎明の夢 外伝

□満る月 後編
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「レン…」

槍に刺し貫かれた彼の少年が、磔にされるようにして浮遊する姿。

「お、お前は…俺の…」

リンドウは自らの愛機の変容に、目を見開き驚いている。
少年は、伏せた瞳を開くと朋友へと目を向け、何処か嬉しそうに微笑んだ。


リンドウ、やっとまともに話せたね


レンは感慨深げにそう口にし、今まで胸に秘めていた想いを言の葉に乗せ紡ぎだす。


…今までずっと伝えられなかったけど、これだけは確り伝えたかったんだ。
僕は…全部覚えてる。
君の初陣の時の緊張も、救えなかった人への後悔も、戦い続ける日々の苦悩も…そして、愛する人達を救う為に、別れる覚悟を決めたことも…



彼との歩みを。
彼との絆を。
その一つ一つを顧みながら懐かしみながら…レンは、リンドウに語り掛けていた。


リンドウと一緒に戦った日々は、僕の誇りだよ。ありがとう…


貴方に感謝を。
レンの…自分の相棒の言葉に、リンドウは深く感じ入り見上げる少年に優しい眼差しを送る。

「ああ…俺もだ…神機使いになって、ずっと…ずっと俺を救ってくれてたんだな。感謝する…」

レンはリンドウの顔を見遣り、幸福そうな満面の笑みを彼に見せた。


十分だよ…僕は十分、報われた…


少年の光が一層強くなり、白光は聖堂内を白く染め抜いた。
光が収まり、空間が元の色を取り戻せば、そこにあの妄執の姿は何処にもなかった。
聖堂は浄化されたように、穏やかな光に包まれている。
ユウが不可思議そうに辺りを見回せば、目の前の少年に声を掛けられた。


本当にありがとう…貴女のおかげでここまで来られました


「…ううん…私だけじゃ、ここまで来られなかった。レン、あなたが傍で支えてくれてたから私はリンドウさんに会えたんだよ?」

正直な気持ちを彼に返せば、少年は擽ったそうにして笑う。


ふふ…貴女がそういう人だから、僕は貴女と一緒に過ごした時間がとても楽しかったんです…


レンはこちらへと近付き、真摯な瞳で自分を見詰めた。


リンドウのことで貴女が僕に掴み掛かった時、貴女の傍らで一緒に生きていくのも悪くないなと…そう思った程に…


「…っ」

彼の告白に顔が熱くなる。
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