黎明の夢 外伝

□最悪の再会
10ページ/12ページ

アラガミは生き延びようとその場で藻掻き苦しんでいた。

『ちっ…浅いか!』

止めを刺さんと腕を伸ばすも、もう一体のコンゴウに立ちはだかるように道を塞がれ、追撃を阻まれる。

『邪魔くせぇんだよっ!!』

苛立ちをぶつけるように、コンゴウに彼は拳を振り抜いた。

べしゃり。
ベタリと血を撒き散らし、壁に叩き付けられ潰された蛙ような惨たらしい死によう。
彼の繰り出したただの一撃で、コンゴウは絶命する。

『くたばれえぇっ!!!!』

残りのコンゴウに飛び掛かる彼は、頭上から地面に叩き付けるような強烈な打撃を見舞わせた。
もとより瀕死のコンゴウは鋼の拳に押し潰され、呆気なく圧死する。

『何処だ…全員無事か?』

沈黙した猿達から目線を外し、自分が守ろうとした者達の姿を彼は探した。
だが、

『…うあっ!?』

彼らの姿を目にするや、身体が意識が彼の予期せぬ方向へと動き出す。
ギリギリと、油の切れたブリキ人形のようにゆっくりと腕が掲げられた。

『な、何なんだ!!』

力が漲る。
眼前に佇む、自らのよく知る赤い青年に向け拳を振り落とすその為に。
それは紛れもない、他者を蹂躙したいという衝動。
殺戮への歪んだ欲求。

『…や、やめろ!避けろ!避けてくれ!頼むっ!!』

手を掛けたくないとの彼の一念が僅かに攻撃の手を緩ませ、振り落とした腕はすんでに青年に躱された。

そのことに安堵するも身体は彼の意思とは反して、相対する青年に歯牙を掛けようと、攻撃の手を止めようとはしない。

『…早くっ!逃げろっ!!』

口にする言葉とは裏腹に、獣の情動に支配された身体は、目の前の存在の四肢を引き裂きたいと、無慈悲に鋭い爪を振り落とす。

青年は装甲を展開し、その直撃は免れたものの体勢を崩し、地に腰を付け動けないでいた。

彼が躙り寄る。
彼が止めを刺す。
その時に至るまで、ほんの一息。


ドォウンッ!!!!


彼方からよりの砲撃。
二人の間に放たれたそれにより、虚を突かれた彼は警戒するように詰めた間合いを再び離した。

上空よりの全力射撃を見舞わせた非常識なその存在は、彼らの間に割って入るように着地をすると白刃を閃かせ険しい面差しで切っ先を彼へと向ける。
それは…その人物は――、

私。

彼は心の中で驚きの声を上げた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ