黎明の夢 外伝

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倒れる彼女の身体を受け止めようと、ユウはカノンの許へ駆け出すが、それより前に目の前を追い抜かしていく影にカノンは抱き止められた。

「ハァハァ…ジーナさん…?」

「喋らないで。ヒバリ、医療班の手配を」

ジーナはその腕に捉えた少女の身体をゆっくりと床へ下ろすと、極めて冷静に後ろのヒバリに指示を出す。

傷は思ったよりも深い。
余程の敵に手痛くやられたのだろう。
気を失わず、よくここまで戻って来られたものだ。

程なく、エントランスに医療班のスタッフが到着し、彼女をストレチャーに移動させようとしたのだが、
カノンはジーナの服の裾を掴むと首を横に振りそれに乗ることを拒絶した。

「待って…ください…ハァ…私のことより…ブレンダンさんを早く…たすけ…っ」

カノンは荒い息で必死に彼の助命の言葉を紡ぐ。

「…カノン…ブレンダンとは何処ではぐれたの?」

「煉獄の…地下街の深部です…青い人型のアラガミと…ハァ…まだ交戦中だと…思います…通信障害で…応援が呼べなくて、ブレンダンさんは…アナグラに応援要請をするように…私を先に逃がして…くれたんです…」

『役に立てなくて…ごめんなさい』と…そう最後に掻き消えそうな声でカノンは謝罪すると、意識を落とした。

責任感だけで今まで意識を保っていたのだろう。
気を失った彼女はストレチャーに乗せられ、速やかに医務室へと移された。

焦慮の空気が色濃く、この場を支配する。

ブレンダンは未だ一人で不明のアラガミと交戦しているのだと、彼女は言っていた。

時間的に見て、アネットを逃がしたすぐ後にカノンも戦線を離脱したのだろう。なら、彼は四時間近い時間を一人で戦い抜いているということだ。

非常に不味い状況。

彼の許へ速やかに部隊を派遣しなければ、彼は命を落としかねない。
だが、それ相応の実力を有した神機使いで部隊編成をしなければ、逆に返り討ちに合う。

ミイラ取りがミイラになってしまっては本末転倒だ。

…私が出れたら!!

ユウはギリと歯噛みした。打ちに出れない無力な自分自身に怒りを禁じ得ない。

「っ…ヒバリさん!ソーマとサクヤさんは今何処にいますか!!」

ユウは当たるように焦りの言葉をヒバリに投げ付けた。
彼らの所在を急ぎ確かめた彼女は、ふるふると首を横に振り希望のない言葉を紡ぎ出す。
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