黎明の夢 外伝

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そう言うと、アリサはとうとう眦に溜まる涙を溢した。

「ごめん…ごめん、アリサ…私が悪かったから…お願いだから泣かないで…」

ユウはポロポロと涙を溢すアリサに歩み寄ると、その背中を優しく撫でた。
心を砕いてくれたこの子を泣かせるなんて…本当に、自分は隊長失格だ…

「…すいません…ユウさんを元気付けたくてお茶に誘ったのに、私の方が泣き出しちゃうなんて…」

「ううん…謝るのは私の方だよ…さっきのは私に非があったことだもの…
ごめんね、馬鹿な話しちゃって…」

『仕切り直そうか?』と、湿っぽくなった空気を変えようと、ユウが再度アリサにお茶をしようと誘おうとしたところ、何やらカフェテリアの外が騒がしくなった。

「…?何か…あったんでしょうか?」

アリサは入り口付近でたむろする、神機使い達の色めき出す様子に怪訝な目を向けている。

その中の何人かが中へと入って来たが、彼らが口々にするその内容を耳にして、ユウは驚き彼らをじっと見詰めてその姿を目で追った。


『防衛班の連中が任務中に行方不明になったらしいぜ?』


それが彼らが口にした会話の内容だ。

一体、どういうことなのかと、耳をそばだて話の続きを聞く。

不明者はカノンとブレンダンの二名。
彼らは新人のアネットを伴い捜索任務に出向いていたのだが、その途中、正体不明のアラガミに襲われたらしい。

交戦した結果、分が悪いと判断した彼らは、まだ実戦経験の浅いアネットを逃がし、自分達はその場に残留したのだそうだ。

「…新人庇って迷子かよ。だから、新兵と任務に着きたかないんだよなぁ」

「二階級特進っつても殉職でじゃ、洒落にならねぇよな…リンドウさんの二の舞は流石に御免だぜ」

男達からは、不明者に気を掛けるような言葉は一切口にされない。
助けに行こうという考えは、端から持ち合わせていないらしい。

「…アリサ、アネットを探しに行こう」

利己的な考えと、無責任な言葉しか紡がれないことに胸が悪くなり、ユウはこの場を離れようとアリサに促した。

「了解です、リーダー。
アネット、まだエントランスにいるかも知れませんね…」

彼らの話からするに、アネットは今しがたアナグラに帰還したばかりの様子だ。まだ、ゲート近くにいるかも知れない。

詳細は彼女から聞いた方が早いだろう。

一時の休息から一転、緊迫した情勢にユウ達はエントランスへと、足早に向かって行った。
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