黎明の夢 外伝
□hide and seek
3ページ/23ページ
そう言うと、アリサはとうとう眦に溜まる涙を溢した。
「ごめん…ごめん、アリサ…私が悪かったから…お願いだから泣かないで…」
ユウはポロポロと涙を溢すアリサに歩み寄ると、その背中を優しく撫でた。
心を砕いてくれたこの子を泣かせるなんて…本当に、自分は隊長失格だ…
「…すいません…ユウさんを元気付けたくてお茶に誘ったのに、私の方が泣き出しちゃうなんて…」
「ううん…謝るのは私の方だよ…さっきのは私に非があったことだもの…
ごめんね、馬鹿な話しちゃって…」
『仕切り直そうか?』と、湿っぽくなった空気を変えようと、ユウが再度アリサにお茶をしようと誘おうとしたところ、何やらカフェテリアの外が騒がしくなった。
「…?何か…あったんでしょうか?」
アリサは入り口付近でたむろする、神機使い達の色めき出す様子に怪訝な目を向けている。
その中の何人かが中へと入って来たが、彼らが口々にするその内容を耳にして、ユウは驚き彼らをじっと見詰めてその姿を目で追った。
『防衛班の連中が任務中に行方不明になったらしいぜ?』
それが彼らが口にした会話の内容だ。
一体、どういうことなのかと、耳をそばだて話の続きを聞く。
不明者はカノンとブレンダンの二名。
彼らは新人のアネットを伴い捜索任務に出向いていたのだが、その途中、正体不明のアラガミに襲われたらしい。
交戦した結果、分が悪いと判断した彼らは、まだ実戦経験の浅いアネットを逃がし、自分達はその場に残留したのだそうだ。
「…新人庇って迷子かよ。だから、新兵と任務に着きたかないんだよなぁ」
「二階級特進っつても殉職でじゃ、洒落にならねぇよな…リンドウさんの二の舞は流石に御免だぜ」
男達からは、不明者に気を掛けるような言葉は一切口にされない。
助けに行こうという考えは、端から持ち合わせていないらしい。
「…アリサ、アネットを探しに行こう」
利己的な考えと、無責任な言葉しか紡がれないことに胸が悪くなり、ユウはこの場を離れようとアリサに促した。
「了解です、リーダー。
アネット、まだエントランスにいるかも知れませんね…」
彼らの話からするに、アネットは今しがたアナグラに帰還したばかりの様子だ。まだ、ゲート近くにいるかも知れない。
詳細は彼女から聞いた方が早いだろう。
一時の休息から一転、緊迫した情勢にユウ達はエントランスへと、足早に向かって行った。