黎明の夢 外伝
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「そんなに気落ちしないでください。部隊から外されてショックなのは分かりますけど、このままずっとということはないんですから…」
ずっと…
でも、彼の考え次第では、恐らく"この先ずっと"だ。
それを口に出来る訳もなく、温かい少女の慰めの言葉にも、ユウは力なく笑い返すことしか出来ない。
「それに…私は今回の博士の判断には賛成です」
「…そう…なの?」
それは意外だ。
てっきりアリサは、自分の味方をしてくれるものだとばかり思っていたのに…
彼女は握る手に力を込めて、真剣な眼差しをこちらへ向けた。
「ユウさん、最近、生き急いでいませんか?
私生活にしろ任務にしろ…何だか時間を惜しむような…焦っているような感じがして…サクヤさんと二人、ずっと心配してたんですよ?」
と、アリサは思いもしなかったことを口にする。
知らなかった。
彼女達がそんな風に自分のことを見ていたなんて。
なるべく皆には自分の抱える悩みを知られないように、心配させないようにしていたつもりなのに。
態度では確りと、それが表面に表れていたということか。
恥ずかしい…
胸の内の苦しみを気付いてもらいたい。
そんな浅ましさが表に出ていたのだ。
これは、一人で解決するべきことなのに、みっともなく誰かに縋ろうとする情けない自分自身に微かな憤りを覚えた。
ユウは顔を伏せて、ごめんともう一度彼女に謝る。
「ユウさん…私は謝って欲しい訳じゃないんです…
ただ、第七に移籍した時みたいに何も言わずに皆の前から消えちゃうんじゃないかって…それが心配で…」
アリサは物憂げにこちらを見詰めていた。
目の前で両親を喪った彼女には、離別の辛さは何より堪えられないものなのだろう。
でも…それでも、別れは必ず来るものだ。
「…大丈夫だよ、アリサ。あの時みたいに皆に黙って居なくなるなんてことは…しないから…」
軽い気持ちでアリサに答えたこの言葉が不味かった。
彼女はテーブルに荒々しく手を叩きつけ、すっくと立ち上がると険しい瞳で自分を睨む。
「"しない"って何ですか!それじゃあ…それじゃあ、まるでユウさんが居なくなるのが前提みたいな言い方じゃないですか!」
熱り立つアリサの顔は今にも泣き出しそうだ。
「止めてください!そんなこと言うの!!喩え、あなたが一言声を掛けてくれたとしても、あなたが居なくなるなんてこと…私は絶対に許しませんからねっ!!」