黎明の夢 外伝
□hide and seek
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エントランスに辿り着けば、そこには呆然と佇むアネットの姿があった。
アネットに声を掛けると、彼女は半泣きの顔でこちらへ追い縋ってくる。
「先輩!先輩!わた、私…どうしたら…っ!!」
余程、気が動転しているのだろう。微かに嗚咽を含んだ彼女の言葉は、およそ要領を得ない。
ユウは宥めるようにして、アネットの肩を軽く叩いた。
「落ち着いて、アネット。大体のことは聞いているけど、先ずは状況説明。
何があったの?」
彼女は一、二度深呼吸をして、高ぶった気を抑えると、とつとつと事の経緯を話し始める。
「…私…ブレンダンさんとカノンさんに付いて、捜索任務に出てたんですけど…その任務中、煉獄の地下街で見たこともない人型のアラガミと遭遇したんです…」
アネットはその時の情景を思い起こしたのか、顔を青くさせ、ふるりと肩を震わせた。
「そいつ…物凄く強くて…っ…必死に応戦したんですけど…全然…勝てなくて…撤退しようとしたんですけど…すぐに追い付かれて…お二人は…私を…逃がす為に…ふっ…ごめんなさい!わた…私の足が遅かったから…カノンさん達は逃げられなかったんです!!」
そこでアネットは床にへたり込むと、泣き出してしまう。これ以上、彼女から委細を聞き出すのは酷なことだろう。
ユウはカウンターに控えるヒバリに目を向けた。
「ヒバリさん、二人のビーコンの反応はどうなってますか?」
ヒバリはこちらの問いに、コンソールを操作し素早く対応するも、モニターを見詰める彼女の顔は次第に曇っていく。
「…すみません…出力が弱くて反応を上手く捉えられません…ですが、生体反応は健在です。…あれ?」
ヒバリはモニターに目を凝らすと、怪訝な眼差しをそれに送っている。
何かしらの反応が返されたのだろうか?
固唾を呑み彼女の言葉を待っていると、
「アナグラ内にビーコンの反応あり!これは…カノンさんのものです!!」
ガタンッ!!
そう告げたのとほぼ同時。大きな音を立て、出撃ゲートが突然開け放たれた。
一歩、二歩。
ふらりと、覚束ない足取りでこちらへと歩み来るその人は…
「カノンちゃんッ!?」
全身傷だらけのカノンが、生きも絶え絶えにして帰還してきた。
彼女はこちらの姿を確認すると気が抜けたのか、支えを失った人形のように身体が床へと倒れていく。