黎明の夢 外伝

□迷走
12ページ/15ページ

色欲に取り憑かれたアラガミは、惑うことなく自分に飛び掛かる。

「チッ!」

剣を振り抜くには間合いが狭すぎる。
銃に可変させる暇もない。なら、

ユウは肉迫するハガンコンゴウの足を払い、自分に伸ばされた腕を肩に掛けて掴むや、

「はああぁあああああああああぁあァァッ!!!!」

懐に潜り込み腰を跳ね上げて、勢いのまま巨猿の身体を石垣に投げ飛ばした。


ドゴンッ!!!!


土埃を上げて、ハガンコンゴウは石垣に頭をめり込ませ沈黙する。

ゲンから学んだ柔術が役に立った。
役には立ったが…

「…っ…やっぱ、アラガミは投げるもんじゃないな…」

超重量級の相手を無理矢理投げ飛ばした所為で、肩の筋を少し痛めたらしい。

痛みに眉を顰め、肩を擦っていると、後方でアラガミの叫び声が聞こえた。

ぼうっとしている暇はない。早くサクヤ達と合流しなくては。

階下の彼らに追い付こうと一歩、ユウが階段に足を下ろしたところ、

「え?きゃあっ!?」

未練がましコンゴウの伸ばした腕が、服の裾を掴み、ユウはバランスを崩した。

ブチッ!!

次の瞬間、肩口の縫い目が千切れる嫌な音が。
そのままユウは、階段を転がるように下へと落ちていった。

「いってぇ…くそ…何なんだ…って!?うぐぅおっ!?」

アリサの強襲から立ち直ったコウタを、再び襲う白い肢体。
落ちてきたユウの身体が、コウタを無惨に押し潰した。

「むぐっ…今度は何だよ…って…何だコレ、何か柔らかい感触だけど…」

むにゅりと手にも気持ちのいい感触に、少年は顔を上げて自身に覆い被さるモノを確かめる。

「え?え?」

「………っ」

彼の目の前には、眦(まなじり)に涙を溜めて真っ赤な顔で睨む、相棒の姿が。
少年の両の手のひらには、彼女のはだけた衣装から零れた双丘が確りと納まっていた。

「え?うわっ!!ごごご…」

「…っ…コウタの馬鹿あぁっ!!」

乙女の鉄拳が炸裂。
コウタは二つの理由で鼻血を出して吹き飛んだ。

「ユウ!アリサ!!あなた達、一体何があったの?」

後方で控えていたサクヤが、上から落ちてきた自分達に何事かと駆け寄ってくる。
その間、四体のハガンコンゴウは階段を降りてこちらへ進撃しようとしていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ