黎明の夢 外伝
□迷走
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ユウは神機を構え直し、背中を向けたままのハガンコンゴウに躍りか掛かろうとした。
のだが…
グァオオオゥッ!!!!
獣の咆哮が本堂に響き、一匹、二匹と同種のコンゴウが次々と獣道から姿を現す。
知覚した残りのアラガミが全てここへ集結してしまったようだ。
「ユウ…さん…」
「うん…アリサ…」
二人は顔を見合せ、嫌な予感に身を固めた。
居並ぶハガンコンゴウ達は先程のコンゴウと同じように、自分達を品定めするように、じっとこっちを見詰めている。
「アリサ…スタンを掛けるから、それと同時に戦線を離脱。階下のサクヤさん達と合流しよう」
「…りょ、了解しました、リーダー」
じりり…じりり…
猿共は脂ぎった瞳を向けて、こちらへ少しずつ近付いて来る。
「いくよ…3…2…1!!
GO!!」
カッ!!と宵闇を白く染め抜く激しい閃光。
光をまともに浴びた三匹の巨猿は目を焼かれ、歩みを一時止めた。
「アリサッ!!」
「はいっ!!」
その隙を突き、ユウ達は本堂を飛び出した。
足を止めることなく、左手の階段を目指す。
垣根を飛び越え、階段前に差し掛かると階下にサクヤとコウタの姿を確認した。
「こう―」
「ユウさん!後ろっ!!」
並走するアリサからの警鐘。
後ろを振り向けば、そこにはスタンから逃れたハガンコンゴウが突進し、自分達を捉えようとその腕を伸ばしている。
こんな馬鹿力に抱き締められたら、一発で身体中の骨が砕ける!
「っ!?ごめん!!アリサ!!」
「―え?きゃあっ!?」
コンゴウの手がアリサの肩に掛かるそのすんで、ユウは彼女の身体を蹴り階段下へと突き飛ばした。
「え?え!!あ、アリサぁ!?――ふぐぅおっ!?」
ドスン!!
上から降ってきた美少女を下にいたコウタがスマートに受け止めた…訳はなく、少年は彼女のヒッププレスを顔面で受け止める。
「いっ…たぁ…はっ!?こ、コウタ!?な、なにやってるんですか!?このスケベッ!!」
パァン!!と平手の乾いた音が境内に響いた。
アリサは何とか無事のようだ。
問題は…
ハガンコンゴウは標的を自分に定め直したようで、卑しい顔をこちらへ向けている。
心なしかその顔が、ニヤついているように見えた。
冗談じゃない。
アラガミは言うに及ばず、あの人以外の人間に肌を許すつもりはない!