黎明の夢 外伝
□dissonance
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「…私の身の安全を優先して、リンドウさんを救えなかったら…その代償を払っても私が助からなかったら…あなたは後悔します…必ず…」
そして、この人は二度と立ち直れないだろう。
「…博士…私の寿命はもうずっと昔に定められたものなんです…だから―」
もう終わりにしよう。
そう口にしようとしたユウの身体を、博士は引き寄せきつく抱き締めた。
「止せと言ってるだろう!!」
「博士…」
「っ…頼むから…それ以上…何も言わないでくれ…」
博士は肩口に顔を埋め、震えながら泣いている。
その彼の震える背中に手を回し、ユウはギュッと抱き締め返した。
「……愛してるんだ…っ…ユウ、君を愛してるんだよ…っ!」
「…ふっ…私だって!」
返す想いは真実でもそれらは虚しく心に響く。
互いに想う二人の…互いに願うものは…互いの幸せ…
けれども、壊れた天秤では針は傾いたまま。均衡は保てない…
二人の運命は変わらない。