黎明の夢 外伝
□dissonance
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「捜索部隊に加えてください」
「承認出来ない」
「どうしてですか!戦闘行為を行う訳じゃないんですよ?あなたが危惧するようなことなんてないじゃないですか!」
「理由が欲しいなら、さっきのツバキ君の説明で十分だろう」
「…何で…何で分かってくれないんですか!
そんな悠長なこと言ってたら、今度こそリンドウさん死んじゃいます!!
感応現象を起こした私なら、リンドウさんが今何処に居るのか探ることが出来るかも知れないんですよ!
それなのに、何でっ!!」
バンッ!!!!
突然打ち鳴らされた音に、ユウはビクリと身体を震わせ話す口を思わず噤んだ。
目の前には、デスクに手を叩き付けるようにして立ち上がる博士の姿が。
彼は顔を俯かせ、怒りに打ち震えるようにぐっと手を閉じ握り締めている。
「はか―」
「だから、行くなと言っているっ!!!!」
彼は声を張り上げてそう怒鳴った。
伏せた面を上げると、博士は荒い足取りで自分に詰め寄り、
「―痛っ!?」
右腕を掴み上げ、侵食の痕が未だに残る手のひらを自分に見せるや、冷たい面差しでこちらを睨む。
「見ろ、これが今の君の状態だ!侵食現象は小康状態で、払拭された訳ではないと言っただろう!そんな危うい状態で、リンドウ君と接触なんてしたら、君の中に食い込んだ彼の神機のオラクル細胞が活性化し、一気に侵食が進む可能性だってあるんだよ!!」
博士は手を離すと、その手を肩へと持っていき強く掴んで揺さぶった。
「何故…分からないのかと僕に聞いたね?ユウ…君こそ、何故僕の気持ちを理解しない…っ!」
博士は絞り出すように、秘めた本心を苦しげに口にする。
不安と憤りと…ない交ぜにした彼の感情が、見詰めるヘーゼルの瞳を濁らせ揺れていた。
「僕は…僕は今まで、君の我が儘は大概聞いてきただろう!なら、少しは僕の言うことにも素直に従ってくれたらどうなんだっ!!」
痛ましい彼の叫びに…胸が痛くなる。
でも、だからこそ…言わなくては。彼が見ようとしない自分達の現実を。
ユウは掴まれた腕を引き離し、ふるふると首を振ると一歩、二歩と後退りして彼から離れる。