過去おまけ掲載文

□おまけ
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『品祖な科学者のイメージそのままだろ?』と、やや自嘲的に博士は笑ってみせる。

「珈琲も詰め替え用の物を、薬瓶の中に入れて劇薬類と一緒の棚に置いていたんだ。
…まあ、後の落ちは想像がつくだろうけど…
僕はその珈琲と間違えて、劇薬を呷って卒倒した、と言う訳さ。」

「だ、大丈夫だったんですか?」

「大丈夫な訳ないだろ?
一週間近い間、下痢と高熱で意識が混濁した状態が続いていたよ。
夢枕に曾祖父が立って、日本男子の在り方について懇懇と説かれた時には、
ああ、もう駄目だなと思ったくらいさ…」

当時のことを思い出したのか、博士は少しばかり青い顔をして、ふるふると首を振った。

「これには流石に懲りてね、自分が口にするものは、ちゃんとした道具で淹れようと改心した、というのが切っ掛け。
それが高じて、今に至るといったとこかな。」

『ほら…つまらない話だったろ?』そう言って、ばつが悪そうにして自らのカップに口を付けると、彼は話を締め括る。

「……………ぷっ。」

「…ユウ?」

「……くっ‥ふ…あははははははっ!!」

彼に悪いと思いつつも、堪えきれず、ユウは盛大に笑い出した。

「あははっ!な、何ですか、その理由!ふ…い、色気もなんにもないし、夢枕って!くくっ…」

もっと艶っぽい理由かと思えば、なんの事はない、物臭な性分が招いた喜劇だったとは。

こういう、時折自分だけに見せる彼の子供っぽいところが、愛おしくて堪らない。

「…だから話したくなかったんだ…」

「ふふっ…可愛いなぁ。」

「…っ!?こいつ!」

からかいが過ぎたか、博士は腹立たしげに、自分をソファーに押し倒した。
そのまま笑い止まない唇を塞ぐ。

「ん…ぁ‥ふっ…」

優しく、温かい口付け。
その労るような行為に、彼が怒っていないことは、直ぐに分かった。

触れ合う唇を、名残惜しむようにゆっくり離されると、彼に向け微笑み返す。

「くすっ、ペイラー可愛い。」

「まだ言うか。いい加減、笑い止まないと、本気で犯すよ?」

「嘘つき。そんなつもりない癖に。」

そう言って、博士の首に手を回し、今度は自分から口付けをすると、
彼は顔を赤らめ、撃沈したように胸に顔を埋めた。

「…まったく…君ぐらいだよ、僕に可愛いなんて言う子は…」

「当たり前です。私の他にいたら困ります。」
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