泡沫の夢
□chicken heart
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しかし、リッカは意に関せずと言った様子で、笑ってそれを流す。
「博士こそ。初心な女の子に、気を持たせるような態度を取っておいて、
今更、袖になさるなんて、本当に良いご趣味ですね?」
その言葉に頭に血が上った。
「………言ってくれるね、リッカ君。君に…僕の何が分かる!」
自分がどれ程の思いで、彼女を拒絶したのか分かりもしないで、
小娘がよくも知った風な口を利く!
リッカはその声に一瞬驚いてみせたが、何故かすぐにその顔を破顔させ、
『博士、博士』と、ちょいちょいと手招きし、自分に呼び掛けた。
…何だ?
「博士、『私』じゃなくて『僕』になってますよ?」
……っ!?
醜態だ。
小娘相手に、柄にもなく怒声を上げたこともそうだが、素の自分を他人に曝け出してしまうとは。
その事で一気に熱が冷めた。
「気付いてましたか?
博士、あの子の前だと、
『僕』って、たまに出てたそうですよ?」
「…え?」
それは…気が付かなかった…
「博士のことですから、あの子を遠ざけるのには、何か色々と理由があるんでしょうけど…
観察者の顔が、無意識に剥がれてしまうぐらい、気を許しているのなら、
もういっそのこと諦めて、あの子の想いを、受け止めてあげたらどうですか?」
…この子も、駆け引きが上手くなったものだ。
最初に気に障るような態度を取ったのは、
自分の本音を引き出させる為か。
普段なら、そんなちゃちな挑発には乗らないのだが、どうにも自分は彼女のことになると、前後不覚になるらしい。
「はぁ…いい大人をからかうものじゃないよ…」
サカキは大きなため息をつくと、後ろに立つ小さな策士に答えを返す。
「いえいえ、至って真面目に話してますよ?
あたしはともかく、少なくとも、ユウは本気です。」