黎明の夢 外伝

□誰が為に鐘は鳴る 後編
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「ターゲットを確認。距離350」

贖罪の街にて、朽ちたビルの隙間から僅かに垣間見える小さな敵影。
目視では観測しづらいソレを、スコープ越しに捉えたジーナは、傍らに控える第三のメンバーに向けて端的に報告する。

討伐対象は二体。荷電と火炎のヴァジュラテイルだ。花形(第一)とは違い、何時もながらシケた相手だが、仕事は仕事。
小物であろうと、きっちりこなして"大口"へと繋げられればそれでいい。

今回のミッションリーダーであるカレルは、メンバーに顔を向けると行動方針を手早く話す。

「さあ、任務開始だ。前衛にはシュンとフェデリコ。ヴァジュラテイルを分断しながら事に当たれ。しっかり足止めしろよ?
乱戦みたいな査定に響くような、みっともない戦況に持ち込んでみろ、後ろからテメェらのどたま撃ち抜くからな?」

ニッと口の端を引き上げてガキ共に宣告すれば、二人はやや顔を青ざめさせて、ふるりと身体を戦慄かせた。

他の部隊であるならば、味方の緊張を解す為の冗談とも取れる言葉でも、この部隊では決して比喩とは言えないものとなる。

実際、カレルはこの二人に向けて"発破"を掛ける意味合いで、発砲したことがあった。

勿論、当てるつもりなどなく、強力なアラガミを前に怖じ気付くことの多い前衛二人に対しての自分なりの檄であった訳だったのだが…

ともすれば、被弾するほど身体すれすれに着弾したことがトラウマになったか、それ以来こちらが銃口を向ければ、奴らはいい具合に緊張感を持って前へと躍り出るようになった。
ある意味『躾』は成功したと言えなくもない。

「ジーナ、お前は超長距離からの支援射撃、テイルへの牽制と分断を促せ。俺は陽動としてコイツらと前へ出る」

「了解」

「さて、何時ものルーチンワークと行こうか!」

各員に方針を伝え終えれば、各々、与えられた役割を遂行するべく、眼前に配された標的へと切り込んでいった。

慣習とも言える神との"狩り"が今、始まる。

二頭のヴァジュラテイルはこちらに気付くや、迫り来る敵に向け猛々しく咆哮を上げた。

連携を取るように並走してくるヴァジュラテイル。
その二頭の内、右側の一頭の太股に遠方からの的確な狙撃がヒットした。

スナイパー(ジーナ)からの強烈な"キス"だ。

足元を掬われるように銃弾に弾かれたアラガミは、体勢を崩して乾いた大地に身体をめり込ませながら倒れていった。

残りの一頭は倒れる同胞に気を留めることもなく、勢いを衰えさせることなく、こちらへ突進してくる。
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