黎明の夢 外伝

□マーマス・ボーイ
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珍しい光景だなと、自分自身の身に起きていることながら、しみじみ思う。

兵舎区画の自室前。
目の前には帽子を斜めに被った青年…というには成熟していない面差しの少年然とした男の姿が。
彼は決まり悪そうにこちらに頼み事をしていた。
顔立ちが幼い為、自分よりも随分と年下に見えてしまうが、これでも彼はソーマと同じ年齢の筈だ。

そんな年長者の彼から、熱を籠めてミッションの誘いをユウは受けている訳だが、それを承諾するかどうするか、正直悩んでいる。

小川シュン。

第三部隊の神機使いである彼は、偵察任務をこなすことが多い為、討伐班の自分とは接点が少ない。
いや、接点が少ないだけでなく、折り合いもあまり良くない。

口さがなく、協調性が薄い彼とはどうにも馬が合わなくて、衝突したこともあった。

向こうも恐らく同じように自分のことを思っているだろう…と、そう思っていたのだが…

「…なあ、いいだろ?付き合えよ?報奨金の六割は、お前の取り分にしてやるからさぁ。なんなら、報奨アイテムも譲ってやってもいいんだぜ?」

「そんなの別に要らないけど…何で私なの?その条件ならカレルに頼めば、二つ返事で承諾するんじゃない?」

やけに食い下がるシュンにユウは怪訝な目を向けながらそう問い返す。

彼にしてはこの条件は破格だ。だからこそ、訝しむ。
彼は野心家で俗物的な人物。こんな風に戦果を分かち合うような生温い行為は好まない人だ。
少なくとも、自分の目にはそう映っていた。

そんな人間がこんな好条件を提示してくるのは、何か裏があるのではないか?などと、どうしても穿った目を向けてしまうのは仕方あるまい。

シュンは自らの相棒の名が自分の口から出ると、ばつが悪い顔をこちらに見せた。

「…今回のはアイツじゃ"役に立たない"からなぁ」


「え?なに?」

ボソッと小さな声で呟くので、ユウにはシュンがなんと言ったのかよく聞き取れなかった。
もう一度、彼に聞き返せば、『あ?何でもねぇよ』とベタにはぐらかされた。
どうにもきな臭い。

「なんか怪しいなぁ…討伐対象はヴァジュラテイルと堕天のザイゴートなんでしょ?新人の教練がてらに、あなたが連れていけばいいじゃない」
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