黎明の夢 外伝

□もう一度、ここから始めよう
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そこは何処でもあって、何処でもない場所。
初めての場所であり、懐かしくもあるそんな場所。
そこでユウは、金の青年と向き合い言葉を交わしていた。

「…もう、大丈夫か?」

彼はそう自分に聞く。

「うん。もう大丈夫。私はもう諦めたりしない」

はっきりと、青年のカーネリアンの瞳を見据えながら、ユウが言い切れば、彼は目を細め嬉しそうにして笑った。

「…そうか。しかし、愚鈍な女だな、お前は。
そんな単純な帰結に至るまで、ここまで掛かるとは…」

相も変わらない辛辣な口振りに、ユウは苦笑いを浮かべる。

「ごめん、迷惑…ううん…心配掛けて…ありがとう、ずっと、私の傍にいてくれて…ずっと、私を守ってくれて…」

素直に青年に感謝の言葉を述べれば、彼は心底驚いた顔を自分に見せた。

「ふん…気持ちの悪い真似をするな…殊勝な姿などお前には似合わん。
お前は、馬鹿で間抜けで生意気な方が丁度いい」

そう言って、彼は照れ臭そうにして顔を背ける。
己の半身とも言える存在だというのに、こうも性格が違うものかと、そのことがユウには少しだけ可笑しく思えて口許が綻んだ。

「さて、そろそろ俺も戻るか」

「また会える?」

「さあ…それはどうだろうな…俺はあの凡骨と違って暇じゃあない。
無謀な小娘のお守りで手一杯なんでな?」

そう穿った言葉を口にすれば、彼は意地の悪そうな笑みを自分に見せた。

「素直じゃないな…ホントは優しい癖に」

「ふん、ほざけ。ではな…ユウ」

金の青年はこちらへ背を向けると、自らのあるべき場所へと戻っていく。
その背中を見送るユウに、別れ際、彼は手向けの言葉を投げ掛けた。

「ユウ、生き足掻け。
喩え、他人に生き汚いと罵られようとも、死地の中に活路はあるものだ。あの男を…信じてみろ」

「うん…ありがとう、私、頑張るから…イル。
あなたと一緒にいられるように、頑張って生き抜くから…だから、これからも私のこと見守っていてね……兄さん…」

応えは返さず、青年は振り向くことなく去っていく。一瞬垣間見えたその横顔に、満足そうな笑みを浮かべながら…
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