黎明の夢 外伝

□逃げるなっ!!
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神機を握り込む。

未だ力の入らない右腕に意地を見せろと檄を飛ばし、侵食による激しい痛みを訴える左腕に泣き言を言うなと叱咤した。

彼を救う。
その事だけに執心しろ!!

「うおぉおおおおおおおおおおおぉォォ――ッ!!!!」

地を蹴り、眼前のアラガミに向かい躍り掛かると同時に、ハンニバルの拳がユウの身体を目掛けて振り抜かれた。
が、振り抜かれた拳はすんでで届かない。

ユウは両手の神機を水平に振り抜き、身体を滑り込ませるように開きかけたハンニバルのアギトへと、二つの刃を叩き込んだ。


グシュッ!!!!


血飛沫が上がり、口内奥深くに白刃が食い込む。
ジャッキで広げるように、ギリギリとアラガミの上顎と下顎を強引に刃で押し広げた。

「ぐっ…あ"ぁああああっ!!!!」


刃が軋みを上げ、めりめりと肉が裂ける嫌な感触が柄を握り込むこの手に伝わる。
ぐっと、腕を限界まで広げれば、足許に現れる黒い心臓。

ユウは竜の上顎を押さえたまま、その剥き出しになった『全ての元凶』に向け、渾身の力を持って左の拳を叩き込んだ。

引力か斥力か。

拳が触れたその瞬間、世界が、時間が、全てが等しく停止して、ユウの意識は別の意識と混ざり合い融け合って…深淵へと堕ちていった。
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