黎明の夢 外伝
□intermission-2
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千鳥足でなんとか部屋へと戻ったサカキはバスルームに赴き、鏡台の前に立つと未だ酒の抜けぬ自堕落な自らの顔を改めて見る。
…確かに…酷い顔だ…
鏡の向こうの男は、やつれた顔にやけにぎらつく瞳を向けている。
目の下には隈が色濃く浮き出ていて、頬は痩せこけ、肌は不健康な程に蒼白い。
無精髭を生やしたその顔は、精神的にも肉体的にも酷く病的に見え、自分の姿ながら幾ばくか心配になる程だ。
これが他人の目からなら、さぞ不安を煽る姿なのだろう。
……僕は…一体何をしてたんだ?
こんな情けない姿を晒して、同情でも引きたかったのか?
醜態もいいところだ。
この姿を見て、ユウはどんなに不安に思ったのだろう…
最後に会った彼女の目が忘れられない。
置いていかないで、一人にしないでと…縋るあの子を痛みに堪えきれず自分は見放した。
痛みを抱えていたのはあの子も一緒であったというのに…!
サカキは懐から携帯端末を取り出すと、ディスプレイをじっと見詰める。
まだ届くだろうか?
まだ間に合うだろうか?
取り零した夢を掬い上げる為に。
今度こそ、彼女の支えになることを誓って、サカキは震える指先で端末の画面をそっと触れるのだった。