黎明の夢 外伝
□最悪の再会
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嘆きの平原に剣戟の音が響く。
剣を振る。
切っ先は狙い定めた場所を的確に捉え、アラガミの身体がまた一つ崩れていった。
ユウの目の前には深紅の蠍の騎士の姿。
ボルグカムランは既にその身体の半分以上砕かれて、脆弱な肢体をこちらに晒していた。
窮鼠の蠍は、足掻きの針の連撃を繰り出してくる。
それらを白刃を翻し全て弾き返すと、ユウはその懐深くに躍り込む。
強固な防備に綻びが出来たその身では、最早、何一つ守れない。
裸同然なその身体に、ユウは神機の刃を振り抜いた。
肉が裂ける生々しい音。
骨が砕ける確かな手応え。
彼(心臓)を失って尚、この身は神機使いとして申し分なく動いてくれていた。
この手はまだ刀を振ることが出来る。
この足はまだ大地を踏み締めていられる。
大丈夫。まだ、自分は戦える。
ならば、最期の時に至るまで、皆の為にこの身を捧げよう。
博士と決別したことで、自分に掛けられた謹慎処分も取り下げられた。
自身を縛るものは何もない。
リンドウを無事帰還させ、皆が愁いなく笑えるように、あの人に何一つ心残りを作らせない為だけに…これからは生きていこう。
大丈夫、大丈夫…それだけでも自分は生きていける。
剣を振る。
刃は迫る針を打ち砕く。
追随するソーマの渾身の一撃が、カムランの背中を叩き折った。
ぐしゃり。
大剣に押し潰されひしゃげた蠍は、そのまま地に伏して動かなくなった。
降りしきる雨が、赤い肢体をしとどと濡らす。
冷たくなっていくソレの姿を見詰めながら、ユウは傍らに立つソーマに声を掛けた。
「討伐対象の活動停止を確認。お疲れ様…って言いたいとこだけど、コウタの方のグボロがまだ残ってるのか…」
反対側のエリアでは、レンとコウタが堕天のグボロ・グボロと戦闘を行っている筈だ。
交戦経験の多い相手ではあるし、別段、彼らの心配はしてはいないが、攻撃の手は多いに越したことはないだろう。
「ソーマ、"コウタ達"と合流しよう」
「…ン?あ…あぁ…」
努めて平素に彼に対すると、ユウは彼を伴い戦地へと赴く為に歩き出す。
この足は動いてくれる。
この手は神機を握っていられる。
大丈夫、まだ、自分は生きている。
大丈夫…まだ、戦える。