黎明の夢 外伝

□dissonance
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「新型特有の感応現象というヤツだね…それで、ユウ、君はリンドウ君が生きている、と…そう言うんだね?」

支部長室へと赴いたユウは、その場にいた榊支部長代理と、その秘書兼務の雨宮教官に自分の身に起きた事象を逐一報告をした。

彼らは訝る眼差しでこちらの話を聞いている。

「…はい、感応現象が起きるということは、接続した記憶の持ち主が生きていることだと思うんです。
リンドウさんは必ず何処かで生きています」

そうであって欲しい。
けれど、そんな曖昧な希望は口にしない。

組織に於て希望的観測は、部隊を動かす力にはなりはしないから。
信用に足る証言でなければ、彼らはきっと動いてくれないだろう。

だから、ユウはしかつめらしく彼らに『生きている』とそう言い切った。

それでも信には値せず、博士の傍らに立つツバキは眉根を寄せた難しい顔をこちらに見せている。

「昏睡状態にあったアリサを呼び戻した…神機使い同士を繋ぐ力…なのか…?
にわかには信じ難いな…」

実の弟が生きているかも知れないという報せにも、彼女は動じることなく冷静に応じる。

「いずれにせよ、他の誰にも言わず、先ず私達に報告をしたのは賢明だった。
徒に期待させて、また絶望させるというのは、あまりに酷だからな…」

ツバキは物憂げに瞳を伏せてそう語った。

その言葉は、あの人の恋人であるサクヤの為に?
それとも、彼を傷付けた負い目を背負うアリサに向けて?

彼女の言葉は弟への気持ちを圧し殺す姉の本心…
ユウにはツバキの言葉はそんな風に聞こえた。

「うん…兎に角、君が見たという旧寺院付近を調べてみる必要性がありそうだね…後、リンドウ君の状態も詳しく教えて欲しいな。
腕輪の制御のない状態はあまり宜しくないからね…
出来るなら、彼の遺留物を手に入れたいところだけど…」

そう言って、博士はチラリとこちらに目線を流す。

彼としては、リンドウのアラガミ化が進む前に出来る手はなるべく打っておきたいのだろう。

なのに、博士が自分に協力を求めないのは、やはりあの事が深く根を降ろしているからなのだと思う。
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