黎明の夢 外伝
□記憶の残滓
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カンッ‥カラン…
甲高い音を打ち鳴らし、ジュースの缶が格納庫の床を転がっていく。
「…どうかしましたか?」
そうレンに問われ、漸く自分が現実に戻れたことを知った。
掴んだレンの腕を離すと、ユウは呆然と立ち尽くす。
「……」
いや…これは…本当に現実か?
だって…こんな奇跡あり得ない。
もう戻らないと思っていた人が…自分達を置いて行ってしまった筈のあの人が…!
生きてたなんて!!
「あの…ユウさん?」
「…行かなきゃ」
「え?」
眦を決すると、ユウは踵を返して急いでエレベーターへと乗り込み格納庫を出ていった。
一人格納庫に残されたレンは、ユウが落とした初恋ジュースの缶を拾い上げ、彼女が去っていた方を物憂げに見遣る。
「ふぅ……今のが感応現象か…凄いな…」
少年は飲み口を袖で軽く拭うと、僅かに残った中身を口にした。
「皆不味いって言ってたっけな…美味しいのになぁ…これが不味いなんて"人間"の味覚って随分と贅沢なんだな…」
そう独りごちると、レンは最後の一滴までそれを飲み干した。