過去おまけ掲載文
□おまけ
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バレンタイン記念作品。
無印終了後、本編設定。博士とは恋人同士です。
※微裏。苦手な方はバックをお願いいたします。
◇◆◇◆◇◆
キッチンに甘い香りが立ち込める。
ユウはエプロン姿でキッチンに立ち、真剣な面持ちであるモノを作っていた。
明日はバレンタインデー。
今も昔も変わらず、女の子が意中の男性に想いを込めたチョコレートを贈る、そんな日だ。
その日の為に今日ばかりは、第一部隊の隊長である自分も、手に持つのは神機ではなく、
ゴムヘラを片手に、アラガミならぬ目の前のチョコと格闘していた。
「えー、削ったチョコレートに温めた生クリームと牛乳を加えて…丁寧に混ぜる…っと‥」
カノンから借りたお菓子の本を読みながら、調理行程を声に出して確認しつつ作業を進める。
…うーん、やっぱり料理とお菓子作りは違うなぁ…
慣れないスケールでの計量や、きちんと温度を計っての調理は、
普段、目分量で料理をする自分には馴染みがないもので、なかなか上手く出来ている気がしない。
やっぱり、カノンちゃんと一緒に作ればよかったかなぁ…
彼女の申し出を断ったことを、ちょっぴり後悔していた。
けれど、今回のバレンタインだけは、自分一人の力でチョコレートを作りたかったのだ。
あの人と…博士とやっと想いが通じてからの、初めてのバレンタインデー。
自分にとって、それは特別な日でもある。
…博士、喜ぶかな?
男の人は甘いものが苦手な人が多いので、少しばかり心配だ。
一応、その辺りには配慮して、チョコレートにはビターチョコと、隠し味にブランデーを使用してはいるが…
ピピピピッ…
キッチンタイマーの甲高い電子音が鳴り響き、ユウは巡らせていた思考を一旦停止させた。
考えるのは後。今は作ることにだけ専念しないとね。
冷蔵庫の中から、冷やしたチョコ種を取りだすと、
ユウはそれを一口大の大きさに丸めて、ココアパウダーに絡ませる。
程よい大きさと形のチョコレートトリュフが、バットの中に綺麗に並ばれていった。
「うん!上手くいってるんじゃない?」
意外な出来の良さに、ユウは満足気に独りごちる。
日付が変わり、種も残り僅かになった頃、
ピンポーン…
不意に来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。
…?誰かな、こんな時間に?
訝しげな様子でユウが部屋の扉を開けると、思ってもいなかった人物が自分の前に立っていた。