泡沫の夢

□不意打ち
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ここのところ、ユウの様子がおかしい。

ちょうど、あの夜の事があった後からだろうか。

自分に対しての態度が、あからさまに余所余所しいし、顔を合わせても視線を逸らされることも、しばしばだ。

…嫌われたのかな?

彼女の不興を、何処かで買ったのだろうか。

心の中で、胸に手を当て 思い返してみる。

………………………………………思い当たることがありすぎて、どれがそうなのか見当がつきそうもない。

いやぁ…結構不味いことしてたね…僕も…

抱き締めて、キスして(唇ではないけれど)、押し倒して、挙げ句、彼女を半ば無理矢理、部屋に泊めた。

連ねて挙げてみると、いい年した大人がやることではないなと、自分の事ながら呆れ返る。

救いはその一連の行動を、一度にやらなかったことか。

平和な時代なら、確実に捕まってるな…

未成年者に対する淫行とかなんとかで。

まあ、荒んだこの世界でも、あまりいただけない行為であるのは代わりないが。

……やっぱり、嫌われたのかねぇ…

先程、様子のおかしい彼女を心配し、手を差し出したところ、その手を勢いよく弾かれた。

拒絶ともとれるユウのその行動が、チクリとサカキの胸を痛める。

何故、心を痛めることがある。

…嫌われている方がいいのだ。
その方が心残りなく、彼女から離れることが出来る。

自分と共にいることは、あの子にとっては、危険なことなのだから。

…そろそろ、頃合いかもしれない。

以前から考えていたことを、今日彼女達に伝えることにした。

「君達、ちょっといいかな?ちょっと、君達に話しがあるんだ。
もうしばらく付き合ってくれるかい?」

「なんっスか、話って?」

そう言って、自分の方に顔を向けてくれたのは、コウタとアリサ二人だけ。

ユウは、顔を伏せたまま、こちらに目を向けてもくれない。

彼女のその態度に、一抹の寂しさを感じたが、それを表に出すことなく、サカキは言うべき言葉を繋げる。
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