泡沫の夢
□彼と彼女の恋愛事情?
1ページ/2ページ
「…ふああぁっ。」
大きな口を開け、あくびをする女性。
夜明け前、この時間帯が彼女、楠リッカの仕事の始まる時間だ。
出撃するゴッドイーター達の神機の最終調整から、神機パーツの納品のチェック、部品の発注書の提出…今日もやることが山積だ。
「…さて。」
まずは、パーツの納品書を、サカキ博士のところに持って行かないと。
「よっし!今日も頑張るぞ!」
気合いを入れ、リッカはラボへと足を向けた。
「おはようございます、博士。この納品書に目を通しておいて…」
ラボの扉を開け、書類を片手にリッカが中に入ると、いつものモニター付きのチェアではなく、
珍しくソファーの方に座るサカキの姿が目に入った。
「あれ?博士、何でそんなとこに…」
座っているのかと、尋ねようとした自分を、
振り向いた博士が、人差し指を口に添え、静かにするようジェスチャーでそれを伝える。
…何?
何だか普段と違う彼の雰囲気に、違和感を感じる。
博士は、再び前に顔を向き直すと、何かを見つめるように視線を下に向けていた。
彼が何を見つめているのか、好奇心にかられ、
リッカは、そろそろと近づき、それを確かめてみる。
「……あ。」
そこにいたのは、一人の少女。
幼い雛鳥のように、博士の膝に頭を預け、身体を丸めて眠っている。
「…ユウ?」
「そう、やっと寝付いてくれたところなんだ。
ろくに睡眠もとってなかったようでね。
起こさないように、してあげてくれるかい?」
博士は、微笑みを浮かべながら、そう言って自分に頼んだ。
…うわぁ。
その笑顔がいつもと違っていて、リッカは更に驚いた。
‥びっくりだ。この人もこんな顔するんだ。
こんな、誰かを慈しむような表情を。