泡沫の夢
□cure?pure?
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「あっ。」
「おや?」
医務室の扉が開くと、見慣れた少女の姿が、サカキの目に入った。
彼女は慌てたように、手を後ろに隠すと、おずおずと中に入ってくる。
「ユウくん、怪我でもしたのかい?」
「あっ、はい。博士も怪我なさったんですか?」
「私は、ちょっと目薬が切れてね。貰いに来たんだよ。」
最近、目がよく霞む。
年は取りたくないものだ。
サカキは、眼鏡を外し目頭を軽く押さえた。
「あの…医務の先生はどちらに?」
ユウは、部屋の中をキョロキョロ見回し、その姿を探しているようだ。
「ああ、今往診に出掛けてるからね。いないよ。」
「え?そうなんですか?」
当てが外れた、といった顔を少女はしている。
「見せてみなさい。私が処置してあげよう。」
サカキは近くにあったパイプ椅子に腰掛けると、もう一つあった椅子を引き彼女に座るように促す。
「いっ…いいですよ!!このぐらい自分で手当てできます!」
恐縮しているのか、警戒しているのか。
少女は大きな手振りで、申し出を断った。
ふむ…あの時からかったこと、気にしているのかな?
「…そんなに拒絶されると、ちょっと傷付くね?」
わざとそんな風に、萎れた感じでそう言うと、ユウは慌ててその言葉を否定した。
「うっ?えっ?ちっ、違います!違います!
拒絶なんてしてません!そうじゃなくて…えっと…」
おろおろと、どう言葉を繕ったらいいか、表情をコロコロ変えて必死になって考える彼女の姿は、見ていて飽きない。
「ふふっ。なら、私に君の治療をさせてくれるね?」
ううっと、一言呻ると、ユウは観念したように空いた椅子に座った。