泡沫の夢

□cure?pure?
1ページ/4ページ

「あっ。」

「おや?」

医務室の扉が開くと、見慣れた少女の姿が、サカキの目に入った。

彼女は慌てたように、手を後ろに隠すと、おずおずと中に入ってくる。

「ユウくん、怪我でもしたのかい?」

「あっ、はい。博士も怪我なさったんですか?」

「私は、ちょっと目薬が切れてね。貰いに来たんだよ。」

最近、目がよく霞む。
年は取りたくないものだ。

サカキは、眼鏡を外し目頭を軽く押さえた。

「あの…医務の先生はどちらに?」

ユウは、部屋の中をキョロキョロ見回し、その姿を探しているようだ。

「ああ、今往診に出掛けてるからね。いないよ。」

「え?そうなんですか?」

当てが外れた、といった顔を少女はしている。

「見せてみなさい。私が処置してあげよう。」

サカキは近くにあったパイプ椅子に腰掛けると、もう一つあった椅子を引き彼女に座るように促す。

「いっ…いいですよ!!このぐらい自分で手当てできます!」

恐縮しているのか、警戒しているのか。
少女は大きな手振りで、申し出を断った。

ふむ…あの時からかったこと、気にしているのかな?

「…そんなに拒絶されると、ちょっと傷付くね?」

わざとそんな風に、萎れた感じでそう言うと、ユウは慌ててその言葉を否定した。

「うっ?えっ?ちっ、違います!違います!
拒絶なんてしてません!そうじゃなくて…えっと…」

おろおろと、どう言葉を繕ったらいいか、表情をコロコロ変えて必死になって考える彼女の姿は、見ていて飽きない。

「ふふっ。なら、私に君の治療をさせてくれるね?」

ううっと、一言呻ると、ユウは観念したように空いた椅子に座った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ