波乱万丈

□話は平等に聞きます
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1時間目のサボりを心に決めた由宇は、軽やかな足取りで階段を駆け上がり、屋上へのドアを開いた。



『ひゅーっ!Grande(すっげぇー)!!』



気持ち良さげに伸びをする由宇だったが、ピクリと反応して、振り向きもせずに言った。



『―――あー……現在いじめられてると噂の………、ずっこけ3人組だろ?

バッカじゃねぇの?

救いようがないよねっ

「ごめん、フォローのしようがないわ」

『えええ何か俺の扱い酷い』




隅の方でのの字を書いている由宇を、少年と少女が冷ややかに見つめていた。


もう1人の少女は、そんな由宇を気の毒そうに見ている。






そして、ふと1人の少女の顔が弱々しくなり、震える声で小さく言った。


「……あ、あなたも、私たちをいじめに……きた、の………?そうだったら今ここで抹殺しとこう………

何その使い分け超怖い



もともと仕事上耳のいい由宇は、少女の言葉に顔を引きつらせた。


そして少し息をつき、『いじめにきたわけじゃねぇよ』と前置きをした。




『俺は―――君らの話を聞きに来ただけ』

「「「!!」」」




由宇の言葉に、3人は目を見張った。



それを満足そうに見た由宇は、


『聞かせてよ。何があったのか―――……』













しばらくの静寂の後、口を開いたのは黒髪の少女だった。



「―――雨宮 瑠奈の話……聞いた……?」

『ん、聞いた。クラスメートは君らがいじめたって言ってたけど』

「んー……、誰があんなメスブタいじめるの?

今シリアスなところだから笑顔で黒いこと言うのやめなさい



優しい微笑を浮かべながら首をかしげてそう言う少女に、由宇は冷静な突っ込みを入れた。



黒髪の少女はそれを呆れたように見て、話をつづけた。




「その頃はまだ、みんな私たちとも仲が良くて……京子とツナの本性も知らなくて……幸せ、だったのよ……」



何やら一か所切実な思いがこぼれたような気もしたが、それを突っ込むとキリがなさそうなので、由宇はスルーした。


隣の少年少女が何やらクスクス笑っている。



「……特に山本、獄寺、それから…ツナとはよく話をしていたわ。でも―――雨宮が転校してきた……。それからしばらくして、京子が裏庭に呼ばれて……―――」








「えっと、何か用……かな?

「うんっ!あのねぇ……私ぃ………、

アンタに消えてもらいたいのっ

「……え?」


京子は驚いたように目を丸くした。


そんな京子を見て、瑠奈は満足そうに口元を歪めた。



「ふふっ!驚くのも無理ないわぁ。でもねぇ?

うざいんだもの。

この世で一番可愛いのは私よ!私が一番なの!!アンタ、いらないのよ!!」


勝ち誇ったような、酔いしれた様子の瑠奈に、京子は驚くほど愛らしい笑顔を浮かべた。


「そうなんだ!!痛々しいねっ」

「なっ……!?」


京子の言葉に、瑠奈は顔を真っ赤にし、ギリッと歯を噛んだ。


「う、うるさいわよ!……いいわ。すぐに地獄を見せてあげる……!!」



そう言って、雨宮は制服の袖をまくし立て、どこから出したのか、ナイフを取り出し、自分の腕を切りつけた。




「………マゾ……気持ち悪………」

ちっ、違うわよ!

―――アンタなんか消えちゃえっ!すぅ……きゃあああぁぁっ!!

うるせぇよメスブタ

ンだとコラアアァ!!















「―――……これが、真相よ……」

『……なんつーか……根本的には雨宮さんが悪いのに、京子さんも相当悪に見えるのはどうし、

「え?なぁに?

なんでもございませんが何かああぁ!?



ビクゥッと大きく肩を揺らし、由宇は顔から冷たい汗を噴き出しながら必死に少女の笑顔から顔を背けた……。



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