青い鳥
□未定
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「神田さん、これもよろしく」
その言葉とともに、洗濯をしていた私のもとにバサリとたくさんの洗濯物がおかれた。
もうすぐ洗濯が終わってしまうので、もう1度洗わなければならない。
私はその手間を考え、心の中で嘆きながらも、表情を変えずに返事をした。
『……はい』
「……はぁ……もっとハッキリ喋れないの?苛々するわ」
『……すみません』
いつも通りのお叱りに、深々と頭を下げる。
先輩使用人のその人は、再び私を鋭く睨みつけ、「本当に気持ち悪い」と吐き捨てるように言って去って行った。
私は置いて行かれた大量の洗濯物を隣の洗濯機に入れ、洗剤を入れてボタンを押した。
同時に、先ほどまで回っていた洗濯機が、ピーという音を立てて動きを止めた。
洗濯が終わったという合図だ。
私は中から湿った洗濯物を取り出してかごに入れ、それを干すためにベランダへと移動した。
『………。』
1人黙々と洗濯物を干していると、後ろからとんとんと肩をたたかれる。
振り返ると、そこには化粧で目のまわりが黒くなった、別の使用人の子がいた。
その子は悪びれもせずにほうきを私に渡すと、「南棟と西棟の掃除。それから、キッチンの掃除もヨロシクね?」と嫌な笑みを浮かべながら言った。
断ろうか迷っていると、その子はじゃっ!と行ってしまった。
おそらく、守護者の誰かのところへ媚を売りに行ったのだろう。
ここの守護者は、みんな顔のいい人ばかりだ。
使用人のほとんどが、誰を狙うだの誰が1番だの言っているのがよく聞こえる。
―――私も、例外ではなかった。
ふと、洗濯物を干しながら外を見ると、そこには“あの人”がいた。
いつものように1人で、庭の椅子に座って本を読んでいる。
私は止まってしまっていた手にハッとして、急いで残りの洗濯物を干して行った。
ちらりともう1度彼がいたところを見たが、もう彼はどこかに立ち去った後だった―――……。
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