短編小説

□春色、桜色
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貴方はボクの事を知らない。

ボクが貴方と逢ったのはほんの偶然で、
ボクが貴方を好きになったのが必然だっただけだから。

今はまだ知らなくてイイヨ。
でも、近々、
ボクを知ってもらう予定だから。


覚悟、しててネ…?






季節は春。
ボクの家の近くの街路樹は桜だから、一面はピンク色に彩られている。その色は春を連想させるし、今なら名波煌(ナナミキラ)の心の内も表しているようだった。
今年17歳になる名波は今、片思い真っ最中。桜が咲き始めた頃に出逢った年上の男性に恋をしていた。

と言っても、普通の高校生の淡い、可愛い、恋じゃない。春らしい桜色じゃなくて、もっと生々しいような……、言い表すならムラサキ…とか?




「…ハァ、今日もいない」

名波は初めて彼と会った、もとい、見掛けたコンビニの脇に立っていた。コンビニに出入りする客を見る度に目的の人物じゃなくて溜息を吐く。
一度しか見てないけれど、名波はこの人だ、と思っていた。この人はボクのモノだ、と直感が決めていた。
だって、見ただけで躯中に熱が宿って。グッ、と名波の中の雄が目覚めた。
いや──名波の中の淫らな雌が疼いたのだ。
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