短編小説

□秋風に香る、恋匂う
2ページ/25ページ


名波が行動に出たのはあることがキッカケだった。いつもなら一人か男の友人を連れている彼が、女と二人で歩いていたのだ。
綺麗に着飾った女が笑いながら彼に触れている。彼女がいるだろうと思っていても、実際見てみると衝撃は大きかった。

ボクも女なら彼の隣にいれたかもしれない。

そう思ってしまった時、ボクは決めた。女の子になろう、って。
そうすれば、ボクを見てくれるかもしれない……。





一歩ずつ足を進める度に、スカートがなびいた。大腿から下が頼りなくて、うまく歩けているか不安だった。
名波は僅かに俯きながらコンビニまでの道のりを歩いている。いつもと同じ道が異様に長い気がする。
胸元で揺れるスカーフと風が吹く度にヒラヒラと揺れるプリーツスカート。セーラー服に身を包んだ名波は漸くコンビニへとたどり着いた。
現在の時刻、PM10:30。辺りはすっかり暗くなっている。
始めのころは学校帰りに寄っていたけど、会えるのがこの時間だと最近知った。2、3日に一回のペースで来ているのも知っている。
だから、今日はきっとあの人が来る日なのだ。





.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ