短編小説
□冷たくしないで (制作中)
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見るつもりなんてなかった。
ただ、気になっただけだから。
何でも望むようにするから。
冷たくしないで。
痛みに顔を鹿目た。だけど、彼はそんなことに気付くこともない。
高橋覚(タカハシ マナブ)はキリリと手首に食い込んだ紐を見上げた。机の足に両手首を固定されているのが見える。それは学校指定の覚のネクタイだ。
動かせば机もガタガタと音を立てた。
「ナニ、痛いの?」
上からのしかかった男が聞いてくる。覚はコクリと小さく頷いた。
「痛いです…」
「でも外せねぇから。逃げられると困るんだよね」
中津英昭(ナカツ ヒデアキ)はニヤリと笑みを浮かべた。
覚は逃げないからと、小さく言ったが中津は聞いていない。キュッと音がするほど強く縛りつけた。
「高橋があんなとこにいるから悪いんだぜ?」
「でも…」
「言い訳なんていらないな。オレのこと見てたろ?」
「……」
覚は答えられなかった。見ていないと言ったら外してくれるだろうか。
「嘘ついたらわかるからな」
釘を指すように中津は言った。覚には頷く以外できなくなる。何故なら、その時にバッチリと中津と目があったのだから。
覚はゴクリと唾を飲み込んだ。
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