短編小説

□秋風に香る、恋匂う
1ページ/25ページ


彼を見掛けてから、季節は無常にも過ぎていった。桜の季節から、紅葉の季節へと移り変わった。
初めて逢ったコンビニには毎日の様に通った。でもなかなか逢うことは出来なくて、名波には毎日が辛くて仕方なかった。
漸く彼に逢うことが出来たとき、思わず泣いた。チラリと見ただけなのに嬉しくて、嬉しくて、愛しさのあまり泣いてしまった。
その時から数度見るようになってからも、声を掛けれなかった。名波は時が経つにつれ、臆病になっていた。
拒絶された時を思うと絶対に言えない…。

名波は欲望に忠実で、セックスにモラルなんて必要なかった。だけど、彼を思うと他の男には抱かれたくなかった。でも、欲望は貯まっていく。
発散させる為にセックスをする。けれど彼を好きになって、違う男に抱かれても彼を重ねてしまう。他の誰かではなく、彼に抱いてほしいと思わずにはいられなくなった。
欲望が満たされても、満足出来ない。ただ苦しい。

日々、彼を思う度に、逢う度に、抱かれることを思う。そして考えるようになっていた。
何故僕は男なのだろう、と。
もし僕が女の子ならすぐにでも告白出来るのに、と。

想いが募れば募るほど、その気持ちは強くなっていった。


.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ