氷帝2
□【ハロー、ジェントルマン!】
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神様はいじわるだ
「、うっそ……」
真っ白なのは視界ではなくて頭の中なのだけれど、頭の中が真っ白なら何も出来ないわけだから視界が真っ白というのも間違いではないわけであって
でもこの間やっと冬らしくなったねなんて言いながら眺めていた雪は3月上旬並みの気温です、なんていうお天気お姉さんの言う通りすっかり溶けてしまったわけだから、やっぱり真っ白なのは頭の中なのだろう
出来れば頭は充分働いているよ、なんて突っ込みはスルーの方向でお願いします
乙女が一名、ここで傷付いているので
「……なんで、ていうかいつ貼られたのこれわたし知らない、」
目の前の紙につ、と触れてみるけれどそれは『バス時間変更のお知らせ』の事実をわたしに知らしめるだけであった
触れたところで時間が戻るわけがないのなんてわかっていたけれど、わたしはそうせずにはいられなかった
「……時間変更、とか……そーゆーのはもっとはやく、さぁ……」
ついさっき小さくバスが見えたのは気のせいなんかじゃなかった
(走ったら間に合ったかもしれないのに)
だって一週間に一度しか使わないのよこのバス
(ちゃんと確認とかしておけば良かった)
……実は1時間勘違いしてたり
(しないのがわかっているのが余計悲しい、だってさっきケータイみたもの)
、なにより
「…バレンタインなのに、今日……」
神様、どうしてわたしにこんな仕打ちをなさるのですか
チョコは気持ちのこもった手作りだし、ラッピングだって頑張ったし、ちゃんと早めに出掛ける準備を始めて出来る限りのおしゃれをしたし、とにかく頑張ったのわたし
なのにあなたはたった15分間の恋さえも許してくれないの
「、馬鹿みたい、も、何これほんと」
精一杯の想いを詰め込んだ淡いブルーの袋を唇を噛み締めて睨んでみる
やっぱり袋はピンクにすれば良かったかな、なんてもう意味のないことを考えてもみる
見慣れた色のバスが反対車線を何事もなかったかのように走り去っていったような気がしたけれど、視界が涙に揺れていたせいでよくわからなかった
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